家庭医療と痛みの診察室

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口腔顔面の慢性疼痛に対するケタミンの効果

ケタミンの静脈内投与が有効であった口腔顔面領域の慢性疼痛の3症例

椎葉俊司, 河端和音, 左合徹平, 布巻昌仁, 坂本和美 - 日本口腔顔面痛学会雑誌, 2021

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjop/13/1/13_91/_pdf

抄録

 ケタミンは歴史のある全身麻酔薬である.ペインクリニックでは CRPS,帯状疱疹後神経痛幻肢痛などの慢性神経障害性疼痛および,その他の慢性疼痛の治療薬として使用されてきた.ケタミンの静脈内投与が有効であった口腔顔面領域の慢性疼痛の 3 症例を報告する.

症例の概要

 対象は病悩期間が長く,心理社会的ストレスを持つ特発性歯・口腔痛,口腔灼熱症,筋・筋膜性疼痛の3 症例である.薬物療法,神経ブロック療法,理学療法などの治療に抵抗性を示したため,ケタミンの静脈内投与(0.5mg/kg/40min)を行ったところ,良好な痛みの軽減を得た.

考察

 ケタミンは 3 症例の異なった慢性疼痛疾患の痛みを軽減した.痛みには不快な主体的な体験である.痛みには感覚性と情動性の面がある.

 慢性疼痛は前帯状回,島皮質,視床前頭前野などの高次脳が関与する情動性の痛みの占める部分が多い.

 ケタミンの静脈投与が高次脳に作用することで痛みの軽減が得られた可能性がある.

結論

 ケタミンには様々な副作用があることより,静脈内投与には細心の注意を払う必要がある.また,非がん性の慢性疼痛への効果や有害事象に関するエビデンスは非常に少ない.

 適切なプロトコールに基づいた臨床研究によるエビデンスの確立が必要であるが,ケタミン静脈内投与は,あらゆる治療に抵抗性を示す口腔顔面痛の治療法の一つとなる
可能性がある.
キーワード: 慢性疼痛,口腔顔面痛ケタミン,情動,高次脳

 

所感

 周術期でケタミンを使いますが、近年うつ病に対して研究がよくされています。慢性疼痛に対して、現状では積極的に推奨されませんが、治療の一手段として理解しておきたいと思います。