胸部動脈瘤について
胸部動脈瘤について
概要・推奨
最大径55 mm未満(症状なし、紡錘状瘤、半年で5 mm以上の瘤径拡大なし、マルファン症候群を除く)の胸部・胸腹部大動脈瘤に対し、内科治療が推奨される。
内科治療に関しては、血圧値130/80 mmHg未満を目標として血圧管理を行う(推奨度1)。
最大径55 mm未満でも急速拡大(最大径5 mm/半年以上)を認める場合、侵襲的治療を考慮する(推奨度2)。
最大径55 mm以上の大動脈基部・上行大動脈の非破裂性大動脈瘤に対して、外科手術が推奨される(推奨度1)。
最大径55 mm以上の非破裂性弓部大動脈瘤に対して、外科手術が推奨される(推奨度2)。
最大径55 mm以上の非破裂性弓部大動脈瘤で、外科手術が高リスクの症例には、TEVARもしくはハイブリッド手術が推奨される(推奨度2)。
最大径60 mm以上の非破裂性下行大動脈瘤に対して、TEVARが推奨される(推奨度1)。
最大径60 mm以上でTEVAR適応外の非破裂性下行大動脈瘤に対して、外科手術が推奨される(推奨度2)。
最大径60 mm以上の非破裂性胸腹部大動脈瘤に対して、外科手術が推奨される(推奨度2)。
マルファン症候群に合併した胸部大動脈瘤では45 mm以上で侵襲的治療を考慮する(推奨度2)。
胸部大動脈瘤のサイズ計測
胸部大動脈瘤のサイズ計測
大動脈基部拡大(大動脈弁輪拡張症)の造影CT
大動脈基部拡大(大動脈弁輪拡張症)の造影CT
弓部大動脈瘤の造影CT
弓部大動脈瘤の造影CT
高安動脈炎に合併した胸部大動脈瘤
高安動脈炎に合併した胸部大動脈瘤
胸腹部大動脈瘤(慢性B型大動脈解離)の造影CT
胸腹部大動脈瘤(慢性B型大動脈解離)の造影CT
大動脈瘤の分類
大動脈瘤の分類
先天性大動脈二尖弁に合併する上行大動脈瘤
先天性大動脈二尖弁に合併する上行大動脈瘤
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病態・疫学・診察
疾患情報(疫学・病態)
ポイント:
胸部大動脈瘤とは、胸部大動脈壁の一部が全周性または局所性に拡大(正常径の1.5倍)または突出した状態と定義され、大動脈が全体にわたって拡大したものを大動脈拡張症(aortomegaly)と称する。
破裂前の早期発見、早期治療が重要である。胸部X線検査後、疑わしい場合、単純・造影CT/MRIによる精査を行う。多くが破裂するまで無症状であるが、動脈硬化性瘤がほとんどなため、高齢、高血圧、高脂血症、喫煙、家族歴(マルファン症候群など)などの動脈硬化あるいは動脈瘤の危険因子から上記疾患を疑う。非解離性大動脈瘤の発症のピークは、男性は70代、女性は80代である。
分類:
形状的に、大動脈全周の拡張である紡錘状瘤と、一部局所的に突出した嚢状瘤に分類される。また、形態別に、真性瘤(非解離性瘤)、仮性瘤、解離性瘤に分類され、部位別に、上行大動脈瘤(大動脈基部拡大を含む)、弓部大動脈瘤、胸部下行大動脈瘤、胸腹部大動脈瘤に分類される。原因別には、動脈硬化性、変性、炎症性、感染性、外傷、先天性などに分類され、動脈硬化性がほとんどを占める。
大動脈瘤の分類
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出典
日本循環器学会ほか編:日本循環器学会/日本心臓血管外科学会/日本胸部外科学会/日本血管外科学会合同ガイドライン 2020年改訂版 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン.https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/07/JCS2020_Ogino.pdf(2021年1月閲覧)班長:荻野均、p15、表3、大動脈瘤の分類.
胸部大動脈瘤の存在部位による分類
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胸腹部大動脈瘤の分類
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Crawford分類
Ⅰ型:近位胸部下行大動脈から始まり腎動脈上で終わる。
Ⅱ型:近位胸部下行大動脈から始まり腎動脈下で終わる。
Ⅲ型:遠位胸部下行大動脈から始まる。
Ⅳ型:横隔膜以下の腹部大動脈に限局するが、腹部大動脈のほとんどを巻き込んでいる。
問診・診察のポイント
症状:
破裂するまで、ほとんどが無症状であるが、動脈の拡張により神経などを圧迫することにより症状を認めることがある。
弓部大動脈瘤では、左反回神経麻痺から嗄声を来すことがある。ほか、嚥下障害、顔面浮腫などの症状を認めることがある。
肺・気管や食道圧迫に伴う血痰・呼吸困難や嚥下困難を伴うことがある。
瘤に一致して痛みがあれば、切迫破裂として緊急で扱う。
破裂すれば、ほとんどがショックから心停止に陥る。
肺や食道に穿破すれば、喀血や吐血を呈する。
背景疾患・危険因子:
高齢、高血圧、喫煙、高脂血症などの動脈硬化の危険因子を有する場合には本疾患を疑う。
マルファン症候群などの遺伝性結合織疾患で高率に合併する[1]。
大動脈基部拡大(大動脈弁輪拡張症)の造影CT
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マルファン症候群に合併した大動脈弁輪拡張症
a:大動脈弁輪拡張症の造影CT画像
b:大動脈弁輪拡張症の術中写真
c:大動脈基部置換術(ベントール手術)後の造影CT画像
d:大動脈基部置換術(ベントール手術)時の術中写真
出典
荻野均先生よりご提供
胸部大動脈瘤症例の約20%は家族歴を有する[2]。
先天性大動脈二尖弁に高率に合併する。
先天性大動脈二尖弁に合併する上行大動脈瘤
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a:Rapheのない前後型の大動脈二尖弁(大動脈弁狭窄 Sievers分類 type 0 lat)
b:上行大動脈瘤の造影CT (axial image)
c:上行大動脈瘤の造影CT (3D)
出典
著者提供
大動脈炎症候群(高安動脈炎)・巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)に合併する。
慢性閉塞性肺疾患が瘤形成や破裂の危険因子とされている。
腎嚢胞症例で高率に胸部大動脈瘤を合併する[3]。
Bovine arch(腕頭動脈と左総頚動脈が共通幹を形成する大動脈弓部奇形)で高率に胸部大動脈瘤を合併する[4][5]。
フルオロキノロン内服症例で、大動脈解離/大動脈瘤の発生頻度が増加する[8]。
診断方針
想起
高血圧、喫煙、高脂血症などの動脈硬化の危険因子を有する場合には本疾患を疑い、胸部X線検査でスクリーニングする。
胸背部痛、嗄声、呼吸困難、嚥下障害、血痰・喀血、吐血などの症状を訴える場合、本疾患を念頭に置く。
診断
胸部大動脈瘤の診断・治療カスケード
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出典
日本循環器学会ほか編:日本循環器学会/日本心臓血管外科学会/日本胸部外科学会/日本血管外科学会合同ガイドライン 2020年改訂版 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン.https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/07/JCS2020_Ogino.pdf(2021年1月閲覧)班長:荻野均、p48、図48、胸部大動脈瘤の診断・治療カスケード.
ポイント:
胸部CT、MRI検査にて最大径を測定することにより診断となる。
マルチスライスCT(MDCT)で撮影された高分解画像データでは、大動脈の中心線に直交する断面で瘤径を計測することが推奨される。3次元再構成CT画像が利用できない場合には、CT・MRI画像で最大径を測定することにより診断となる[9]。
血液検査:[10]
大動脈瘤の診断は画像検査が中心であるが、高血圧症、脂質代謝異常、糖尿病などの動脈硬化性危険因子に対するリスク管理として血液検査は重要である。
未破裂大動脈瘤の診断の特異的バイオマーカーとして、フィブリノーゲン・Dダイマー・CRP・IL-6・MMP9などが検討されている[11]。
大動脈瘤は大きいほど凝固異常を示す傾向があり、大動脈瘤により線溶亢進型DICを併発することがある。
胸部X線検査:
胸部X線検査上、大動脈に一致した異常陰影として本疾患が疑われる。
典型的所見は、左第1弓の突出で、弓部大動脈瘤を疑う所見である。下行大動脈瘤では大動脈の輪郭に連続する紡錘形ないしは円形の陰影として認めることがある。また、まれに石灰化を生じ瘤の存在が分かることもある。
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左第1弓の突出を認め、弓部大動脈瘤を疑う。
出典
著者提供
下行大動脈瘤
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b:造影CTにて、下行大動脈瘤(解離性)と診断された。
出典
著者提供
弓部大動脈瘤
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a:胸部X線写真にて、左第1弓の突出を認め、弓部大動脈瘤を疑う。
b, c:造影CTにて、弓部大動脈瘤と診断された。
出典
著者提供
胸部X線側面像で心臓陰影に隠れた胸部大動脈瘤を発見できる場合がある。
造影CT・MRI検査:
単純もしくは造影CT・MRI検査で診断確定に至る。単純CT、造影早期相にて撮影し、必要に応じて造影後期相を追加する。マルチスライスCT(MDCT)は検出器が多列化したヘリカルCTで、短い息止め時間で広範囲を高精細に撮影することが可能であり、胸部大動脈瘤の診断精度は最も高い[12]。
画像所見としては、径の大きさ(最大径)、進展範囲、瘤の形状を評価する。他に、壁の石灰化、内側偏位の有無、解離による偽腔の形成の有無、壁在血栓内の高濃度域(大動脈瘤の切迫破裂の所見)を評価する。また、圧迫されている臓器の有無、瘤壁の状況(炎症性大動脈瘤など)、瘤と主要大動脈分枝との位置関係を評価する。大動脈瘤破裂の場合は、大動脈周囲の血種や血管外への造影剤の漏出を認める。大動脈瘤破裂が疑われる場合には、微量の出血所見を見逃さないように注意深く評価を行う。
CTによる大動脈瘤のサイズ計測は、手術適応を決める重要な因子である。MDCTで撮影された高分解画像データでは、3次元再構成CT画像を用いて、大動脈の中心線に直交する断面で瘤径を計測する方法(central line法)が推奨される。MDCTによる3次元再構成CT画像が利用できない場合は、最大径の計測を原則とするが、大動脈が蛇行や斜走する場合は、瘤径を過大あるいは過少評価するリスクがある。<図表>
MRIは、造影剤を用いずに血流を評価することができるメリットがあるが、検査にかかる時間が長く、またアーチファクトを認めることもあり、診断精度としては、造影CT検査と比較すると劣る。また、MRAは造影剤を使用しない方法と、造影剤を使用する方法があり、一般的には造影剤を用いるほうが空間分解能に優れる。
いずれの撮像法を用いた際でも、最も重篤な手術合併症の1つである対麻痺を起こすことを回避するためAdamkiewicz動脈の同定を行う。CT、MRIの両方を用いることで9割程度の症例で同定ができるとされている。CTでは、Adamkiewicz動脈の前脊髄動脈と合流する際の「ヘアピンターン」を目印に同定を行う。
胸部大動脈瘤のサイズ計測
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a:volume rendering法による3D画像
b:大動脈径の計測断面の表示。赤:横断面(axial image)、緑:大動脈中心線ないし軸に直交する垂直断面像での計測
c:横断像(axial image)での計測
横断面での計測は、最大長径(73.5 mm)と最大短径(53.6 mm)が過大評価となる。
d:大動脈中心線に対する垂直断面像(perpendicular image)での計測
大動脈の中心線ないし軸に直交する垂直断面像での計測(51.8 mm)が最も精度の高い評価となる。
出典
自治医科大学さいたま医療センター放射線科 丹野啓介先生よりご提供
弓部大動脈瘤の造影CT
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a:破裂性弓部大動脈瘤(嚢状瘤)の術前CT(axial image)
b:破裂性弓部大動脈瘤(嚢状瘤)の術前CT(3D)
c:弓部大動脈全置換術後CT(3D)
出典
著者提供
高安動脈炎に合併した胸部大動脈瘤
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a:上行弓部大動脈瘤の術前CT(3D)
b:上行弓部大動脈瘤の術前CT(axial image)
c:左鎖骨下動脈閉塞のCT画像(3D)
d:腕頭動脈・左鎖骨下動脈のFDGの集積(PET-CT)
出典
著者提供
胸腹部大動脈瘤(慢性B型大動脈解離)の造影CT
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Crawford Ⅱ型の胸腹部大動脈瘤
出典
荻野均先生よりご提供
造影CTによるAdamkiewicz動脈の同定
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a:造影CT multi-planar reconstruction (MPR) image: ヘアピンターン(矢印)により同定されたAdamkiewicz動脈
b:造影CT curved multi-planar reconstruction (cMPR) image: Adamkiewicz動脈に連続する肋間動脈を同定する。
出典
自治医科大学さいたま医療センター放射線科 丹野啓介先生よりご提供
胸部大動脈の造影CT
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弓部大動脈瘤に対する開窓型ステントグラフト治療
出典
著者提供
心エコー:
大動脈基部病変は心エコーにより診断することもできる。
上行大動脈の拡大・上行大動脈瘤は、心エコーにより診断することもできる(上行径40 mm以上:感度78.6%・特異度92.9%、45 mm以上:感度64.7%・特異度95.3%)。心エコー検査は救急外来での初診時には有効である[13]。
大動脈三尖弁症例は、大動脈二尖弁症例と比較し、大動脈基部における長径と短径の差が大きいため、1 plane のみの計測(傍胸骨左縁長軸断層像など)では大動脈径をunderestimatedしやすい[14]。
血管造影検査:
血管造影検査は、CT・MRI検査の進歩に伴い、必要性は減少した。
鑑別疾患表:
縦隔腫瘍
肺腫瘍
食道腫瘍
胸膜腫瘍
疾患の除外
造影CT・MRIで胸部大動脈との連続性がみられなければ、本疾患は否定的である。
治療方針
原因疾患・合併疾患の評価
ポイント:
原因別に、動脈硬化性、変性、炎症性、感染性、外傷、先天性などに分類され、動脈硬化性がほとんどを占める。
大動脈瘤の分類:<図表>
原因の評価:
ほとんどが動脈硬化性であり、脳血管、冠動脈、末梢動脈、腎動脈などの精査が必要である。動脈硬化のリスクファクターを認めない場合、発熱を認める場合、先天性疾患を示唆する特徴的な所見を認める場合は、動脈硬化性以外の原因の評価を必要とする。
手術が前提であれば、脳、心、肺、腎、肝などの機能を評価する。
感染性:
感染性の起因菌としてブドウ球菌、サルモネラが挙げられ、その他肺炎球菌、梅毒トレポネーマ、結核菌、真菌や嫌気性菌などが挙げられる。
炎症性:
炎症性疾患としては、巨細胞性大動脈炎、高安動脈炎などが挙げられる。<図表>
先天性:
ポイント:
結合組織の疾患として、血管型エーラス・ダンロス症候群(皮膚の過伸展、脆弱性、血腫)、ロイス・ディーツ症候群(頭蓋骨癒合症、二分口蓋垂など)、マルファン症候群(高身長、脊柱側弯症、胸の奇形、細長い手足の指、過伸展)、ターナー症候群などの所見を認める場合は評価を行う。
マルファン症候群:
染色体15q21に存在するFBN1遺伝子が原因遺伝子で、大動脈、骨格、眼、肺、皮膚、硬膜などの全身の結合組織が脆弱になる常染色体優性遺伝性疾患である。結合組織が脆弱の結果、大動脈瘤や大動脈解離、高身長、側弯などの骨格変異、水晶体亜脱臼、自然気胸などを来す。
血管型エーラス・ダンロス症候群:
エーラス・ダンロス症候群は、皮膚、関節の過伸展性、各種組織の脆弱性を特徴とする遺伝性結合組織疾患である。その血管型は皮膚の過伸展は軽度で、易出血性、大小動脈の解離や破裂、消化管穿孔、臓器破裂、創傷治癒遅延を主症状とする。
ロイス・ディーツ症候群:
ロイス・ディーツ症候群はTGFBR1またはTGFBR2遺伝子変異による遺伝性結合織疾患として新規に提唱された疾患で、大動脈病変を主に、心血管系、骨格系、皮膚、他にも特徴的な症状を伴う全身性の遺伝性結合織疾患である。症例の98%で大動脈瘤を認める。
ターナー症候群:
ターナー症候群は、X染色体の全体または一部の欠失に起因した疾患の総称で、性腺機能不全を主病態とするが、大動脈の拡張などを認めることもある。大動脈基部の拡張はターナー罹患女性の最大40%で認められる。
家族性胸部大動脈瘤・解離:[15]
常染色体優性遺伝形式をとるが、新生突然変異により発症する場合を含め、遺伝性・家族性が不明瞭なこともある。既知の原因には、血管平滑筋収縮蛋白質をコードする遺伝子(ACTA2, MYH11, MYLK)の変異や血管平滑筋弛緩に関係するcGMP依存性蛋白キナーゼをコードするPRKG1遺伝子の変異などが報告されている。
その他:
その他、以下の疾患が知られている。
先天性拘縮性蜘蛛状指症、動脈蛇行症候群、多発性嚢胞腎(PKD1、PKD2遺伝子)や、アラジール(Alagille)症候群(JAG1、NOTCH2遺伝子)、ヌーナン症候群(PTPN11、KRAS、SOS1、RAF1遺伝子他)などが知られている。他に、皮膚弛緩症の一部(ELN、FBLN4遺伝子)、骨形成不全症(COL1A1、COL1A2 遺伝子他)でも、大動脈瘤・解離の合併の報告がある。
弁疾患:
二尖弁を認める患者ではより拡張のスピードが速いことが知られている。二尖弁を認めることが分かっている患者では、経食道エコーを行い、大動脈洞のサイズを評価し、40 mm以上の場合はその後の毎年の評価が必要となる。
他の血管疾患:
胸部大動脈瘤症例の約20%は腹部大動脈瘤を合併する[16]。
重症度・予後
重症度:
重症度分類は存在しないが、破裂例は予後不良である。
巨大なものほど破裂しやすく、重症といえる。
広範囲なものも外科治療が困難で、予後に影響し重症といえる。
最大径が55 mmを超えれば破裂の危険性が高まるため、手術リスクを考慮し侵襲的治療を検討する。アルゴリズム
瘤の突出が著しい嚢状瘤は、紡錘状瘤に比して破裂しやすく、より早期の侵襲的治療を必要とする[18]。
感染性瘤や吻合部瘤など、三層構造が破綻した仮性瘤は破裂しやすい。特に、感染性瘤は、人工血管感染の危険性もあり、きわめて予後不良である。
真性瘤に解離を合併した場合にも破裂しやすい。
拡張スピード:
上行動脈瘤は約1 mm/年、下降動脈瘤は約3 mm/年のスピードで拡大する[19][20]。ただし、先天性の以上を認める場合や、二尖弁を認める場合は、進行が早く約2 mm/年などのスピードとなることが多い[21][22][23]。
生存率・破裂率:
未治療の胸部大動脈瘤の1年生存率は65%、3年、5年ではそれぞれ36%、20%である。破裂は3~5割の死亡の原因を占める、中央値は2年ほどで、長期的には3~7割の患者で認めていた[24][25][26]。治療をした場合の2年生存率は7割、5年生存率は6割であった。
破裂率[26][27][28]はサイズによって大きく異なり、40~49 mmの間では2%/年未満であるが[27]、胸部大動脈の瘤径が50~60 mmでの心血管事故率は年間6.5%、60 mm以上で年間15.6%とされる[28]。上行動脈瘤では60 mmで、下行動脈瘤では70 mm以上で破裂率の上昇が認められており、破裂時の直径の中央値は上行動脈瘤で59 mm、下行動脈瘤で72 mmであった[29]。
治療
ポイント:
降圧、禁煙が破裂防止に重要であり、最大径≧55 mm、嚢状瘤、急速拡大(≧5 mm/半年)、切迫破裂(有症状)・破裂の胸部大動脈瘤は、侵襲的治療(手術もしくはステントグラフト)の対象となる。
手術術式が、大動脈瘤の存在部位により異なるため、侵襲的治療の推奨度も大動脈瘤の存在部位により異なる。非破裂性大動脈瘤の場合、大動脈基部・上行大動脈領域の大動脈瘤では瘤径55 mm以上が推奨度1、弓部大動脈瘤では瘤径55 mm以上が推奨度2、下行大動脈瘤および胸腹部大動脈瘤の場合、瘤径60 mm以上が推奨度2となる。
胸部大動脈瘤の診断・治療カスケード
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出典
日本循環器学会ほか編:日本循環器学会/日本心臓血管外科学会/日本胸部外科学会/日本血管外科学会合同ガイドライン 2020年改訂版 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン.https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/07/JCS2020_Ogino.pdf(2021年1月閲覧)班長:荻野均、p48、図48、胸部大動脈瘤の診断・治療カスケード.
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降圧、脂質管理、禁煙・生活指導:
最大径55 mm未満(症状なし、紡錘状瘤、半年で5 mm以上の瘤径拡大なし、マルファン症候群を除く)の胸部・胸腹部大動脈瘤に対し、内科治療が推奨される。マルファン症候群など遺伝性結合織疾患の場合も、45 mm未満では内科治療が推奨される。
マルファン症候群の薬物治療はβ遮断薬が標準治療である。β遮断薬+placebo群と比較し、β遮断薬+ロサルタン群は、3年間の経過観察期間では、収縮期/拡張期血圧を減少させたものの、大動脈拡大率は減少させなかった[30]。
血圧のコントロールが重要で、血圧の目標を130/80 mmHg以下にする。
胸部大動脈瘤症例で、家族性高コレステロール血症、急性冠症候群の既往、糖尿病のうち1つを合併する場合には、LDL-Cの目標値を70 mg/dL未満とし、冠動脈疾患のみであれば100 mg/dL、胸部大動脈瘤のみであれば120 mg/dLを目標に脂質管理を行う[31]。
非破裂胸部大動脈瘤に合併するDICに対しては、抗凝固療法として薬物治療(ヘパリン類やナファモスタット、遺伝子組換えトロンボモジュリン)が実施されることがあるが、確立した治療法はない。出血傾向を呈しフィブリノーゲンの減少を認める場合には新鮮凍結血漿の補充を検討する[32]。
生活指導:
減塩する。
禁煙する。
暴飲暴食を避け、肥満を避ける。
過労、睡眠不足、ストレスを避け、規則正しい無理のない生活を送る。
いきみや重労働は避ける。
マルファン症候群症例は、激しい衝突や接触を伴う運動、重量上げ、isometric 運動(筋肉を動かさず収縮させる運動)を含む運動は避ける[33]。
処方例:降圧療法例
禁煙、血圧のコントロールが重要で、血圧の目標を130/80 mmHg以下にする。
血圧を目標値にコントロールするため、下記を適宜用いることを検討する。
1) メインテート錠2.5mg 1~2錠 分1~2 朝夕 [㊜高血圧症]
2) ビソノテープ4mg 1回4~8mg 1日1回貼付 [㊜高血圧症]
最大径55 mm未満(症状なし、半年で5 mm以上の瘤径拡大なし、遺伝性結合織疾患を除く)の胸部・胸腹部大動脈瘤に対し、内科治療が推奨される。(参考文献:[28])マルファン症候群など遺伝性結合織疾患の場合は、45 mm以上で手術適応となる場合がある(推奨度2J)。(参考文献:[28])
血圧のコントロールが重要であり、130/80 mmHg未満を目標に血圧管理を行う(推奨度1J)。動脈硬化性の胸部大動脈瘤症例の薬物治療でも、β遮断薬が降圧療法の第1選択薬剤である。
追記:紡錘状瘤に当てはまる基準であり、嚢状瘤ではこの限りではなく、より早期の(小さい)段階での外科治療が望ましい。
フォローアップ:
下記の基準をもとにフォローアップ評価を行う[34]。
最大径45 mm未満では1年ごとのCT検査を行う。
45~55 mm・55 mm以上では3カ月~半年ごとのCT検査を行う。
急速拡大(最大径5 mm/半年以上)を認める場合には3カ月ごとのCT検査を行う。
嚢状瘤の場合はこの限りではなく、頻回に検査する。
侵襲的治療の適応:(参考文献:[28][35])
侵襲的治療(手術もしくはステントグラフト)の適応は破裂のリスクと治療のリスクとの兼ね合いで決定される。破裂のリスクは主に大動脈径と遺伝的大動脈疾患の有無に影響され、形状や拡大速度にも影響される。遺伝性大動脈疾患には、マルファン症候群、ロイス・ディーツ症候群、エーラス・ダンロス症候群、家族性胸部大動脈瘤・解離、先天性大動脈二尖弁などある。形状としては紡錘状瘤と比較し嚢状瘤が破裂しやすい。拡大速度は、半年で5 mm以上拡大する症例は破裂しやすい。下記の場合、侵襲的治療の適応と判断する。
瘤の位置にかかわらず、最大径55㎜未満であっても半年間に5 mm以上の急速拡大を認める胸部大動脈瘤(推奨度2J)。
大動脈基部・上行大動脈領域では、遺伝性大動脈疾患がない場合は、大動脈径55 mm以上(推奨度1J)。
大動脈二尖弁の場合は、大動脈基部・上行または弓部大動脈径55 mm以上(推奨度1J)、大動脈解離の危険因子*を有する場合には50 mm以上(推奨度2J)、大動脈弁手術施行時に大動脈二尖弁に合併した45 mm以上の上行大動脈拡大(推奨度2J)。
マルファン症候群の場合は、大動脈基部・上行大動脈領域では、最大径50 mm以上の瘤(推奨度1J)。最大径45 mm以上の瘤で大動脈解離の危険因子*を有する場合、また、妊娠予定の女性で最大径40 mm以上の瘤を有する場合の予防的手術(推奨度2J)。
弓部大動脈以下では、遺伝性大動脈疾患がない場合は、弓部で大動脈径55 mm以上(推奨度2J)、下行・胸腹部で60 mm以上(推奨度2J)。
瘤の位置にかかわらず、瘤に一致して痛みを伴う切迫破裂例や破裂例(推奨度1J)。
*大動脈解離の危険因子:大動脈解離の家族歴、大動脈拡大速度>5 mm/半年、重症の大動脈弁閉鎖不全、妊娠希望など
身長・体表面積補正での瘤径の補正(推奨度3G)。(参考文献:[36][37])
2010 ACCF/AHA/AATS/ACR/ASA/SCA/SCAI/SIR/STS/SVMガイドラインでは、マルファン症候群や大動脈二尖弁症例の無症候性大動脈拡大に対して、身長で最大大動脈面積を補正して手術適応となる閾値サイズを決定する手法がClassⅡa、レベルCで記載されている。マルファン症候群や大動脈二尖弁に限らず、体表面積で最大径を補正して手術適応となる閾値サイズを決定する方法は、2006年Yale大学の研究グループから報告され最大大動脈径/体表面積>2.75 cm/m2が手術閾値として推奨されているが、一般的には用いられていない[38]。2014年ESCガイドラインでも低身長の体表面積が少ない症例に対する早期の手術治療介入はClassⅡb、レベルCで記載されている[37]。
胸部大動脈手術実施症例のJapan scoreによる手術リスク評価(https://jcvsd.org/JapanSCORE/JapanSCORE)(推奨度1J)。(参考文献:[39])
日本成人心臓血管外科手術データベース(Japan Adult Cardiovascular Surgery Database:JACVSD)に集積されたデータに基づき、胸部大動脈手術実施症例の手術リスク評価が可能であり、臨床上有用性が高い。
外科手術の術式選択:(参考文献:[28])
広範囲例には分割手術も考慮する。高齢、耐術困難な場合には、ステントグラフト治療を選択する。手術とステントグラフト治療を併用したハイブリッド治療も考慮する。
大動脈基部に対する手術術式は弁付グラフト(Bentall手術)、同種大動脈(ホモグラフト)、異種大動脈、自己肺動脈弁(Ross 手術)など弁置換を基本とする術式と、自己弁温存大動脈基部置換術(aortic valve sparing surgery;AVS)に大別される。冠動脈に関しては、Button Bentall法を基本とし、冠状動脈の授動が困難な場合には人工血管を介在させるPiehler法を用いる。大動脈基部病変の標準術式はBentall手術であるが、若年患者に対しては、熟練した手術チームによる自己弁温存大動脈基部置換術が推奨される。
瘤径55 mm以上の弓部、遠位弓部大動脈瘤では、弓部大動脈置換術を実施する。弓部大動脈置換術では、確実な脳保護手段が重要である。弓部大動脈瘤では外科手術が第1選択であり、末梢側大動脈にステントグラフトを挿入するオープンステント法も近年増加傾向である。
瘤径60 mm以上でTEVAR適応外の胸部下行・胸腹部大動脈瘤では、胸部下行・胸腹部大動脈置換術を行う。術前にMRやCTなどによりAdamkiewicz動脈を同定し、肋間動脈再建、温存の手がかりとする。術中は、運動性脊髄誘発電位や体性知覚電位を継続的に評価し脊髄虚血をモニタリングする。広範囲に及ぶ下行大動脈瘤および胸腹部大動脈瘤の開胸開腹手術では、禁忌がなければ、脳脊髄液ドレナージの実施が望ましい。
造影CTによるAdamkiewicz動脈の同定:<図表>
術前の評価:
瘤の形態、形状、部位、原因を正確に把握する。
脳、心、肺、肝、腎、消化管、末梢血管などの併存疾患を精査する。
開胸下、体外循環や低体温を用いた人工血管置換術に耐術できるかどうかを判断する。
手術の合併率・術後成績:
上行、基部大動脈瘤に対する待機手術の成績は一般的に良好であるが、待機・緊急手術ともに、下行大動脈瘤と胸腹部大動脈瘤の在院死亡率は高値である。下肢対麻痺の合併頻度も低くない(平均5~10%程度)。
胸腹部大動脈瘤に対する手術成績(在院死亡率・対麻痺発生率)は、大動脈瘤の進展範囲により影響を受ける。特に、近位胸部下行大動脈~腎動脈下まで達するCrawford Ⅱ型は、他の胸腹部大動脈瘤に比べて、治療成績は不良である[40]。
ステント術(TEVAR):(参考文献:[28])
上行大動脈瘤に対する血管内治療の適応は現状ではない。弓部大動脈瘤に対する血管内治療は高齢者、外科手術ハイリスク例である。下行大動脈瘤に関しては、解剖学的状況がデバイスの適応に適合するならば、合併症が低率であることより、特に外科手術ハイリスク例では第1選択の治療である。また、外科手術ローリスク例でも検討をしてもよい。腹部主要分枝の再建を必要とする胸腹部大動脈瘤では、外科手術困難例、ハイリスク例に適応とされる。
外傷性大動脈損傷、特に動脈管索ならびに下行大動脈に発生する外傷性大動脈損傷については、ステントグラフトが第1選択となる。
胸部下行大動脈瘤破裂例に対しては、ステントグラフト治療が外科的手術と比較して良好であり、推奨されている。
なお、胸部大動脈瘤に対するステントグラフト治療後の生存率は外科手術治療同などで、40~87%/5年程度である。
TEVARの適応は症例ごとの解剖学的要因を主として、病因、併存疾患、余命などを考慮に入れ、他の治療法(外科手術、内科薬物療法)と比較したうえで総合的に判断する(推奨度1J)。
瘤の中枢・末梢には20 mm以上の健康なlanding zoneの確保が必要である。また、それぞれのlanding zoneにおいて、大動脈径の10~30%オーバーサイジング径のステントグラフトで行う(推奨度1J)。
大動脈血管内治療に熟練した施設、治療チームにおいて、外科手術チームのバックアップ体制下に行う(推奨度1J)。
解剖学的要件を満たす胸部大動脈瘤破裂に対しては、外科手術よりもTEVARを選択する(推奨度1J)。
侵襲的治療が必要で、解剖学的要件を満たす外傷性大動脈損傷に対してTEVARを施行する(推奨度1J)。
解剖学的要件を満たす下行大動脈瘤(≧60 mm)に対してTEVARを施行する(推奨度1J)。
外科手術が高リスクの弓部大動脈瘤症例には、階窓型ステントグラフトを使用したTEVAR、分枝再建を伴うTEVAR、またはin situ開窓術を用いたTEVARを考慮する(推奨度2J)。
解剖学的要件を満たす下行大動脈瘤(≧55 mm)に対してTEVARを施行する(推奨度2J)。
脊髄障害の高リスク例に対する広範囲に及ぶTEVARで、禁忌がなければ、脳脊髄液ドレナージを考慮する(推奨度2J)。
胸部大動脈瘤に対するステントグラフト治療
画像
a:術前
b:術後
出典
著者提供
エンドリーク:[28][37]
エンドリークには、その漏れる部位により以下の4 typeが存在する。Type Ⅱが一番頻度の高いリークである。
TEVAR後にエンドリークが判明した場合、Type I, Ⅲは可及的速やかに、Type Ⅱ, Ⅴは瘤径拡大を認めた場合に追加治療を行う(推奨度1J)[41]。
TypeⅠ:ステントグラフトと宿主大動脈との接合不全に基づいたleakで、perigraft leakとも呼ばれる。Ia(中枢側から)とIb(末梢側から)に分けられる。
TypeⅡ:大動脈瘤側枝からの逆流に伴うleakで、side branch endoleakとも呼ばれる。
TypeⅢ:ステントグラフト-ステントグラフト間の接合部、あるいはステントグラフトのグラフト損傷などに伴うleakでconnection leakあるいはfabric leakとも呼ばれる。
TypeⅣ:ステントグラフトのporosityからのleakでporosityleakとも呼ばれる。
TypeⅤ:画像診断上、明らかなendoleakは指摘できないが、徐々に拡大傾向を来すもので、endotensionとも呼ばれる。
Stent graft-induced new entry:[42]
Stent graft-induced new entry(SINE)は、ステントグラフトにより新規内膜tearが形成される大動脈ステント手術に伴う合併症であり、中枢側に発生すれば逆行性解離を発症し、末梢側でも大動脈拡大などを生じうる。通常、無症候性であり、routine surveillanceの造影CT検査で発見されることも多い。慢性B型解離に対する大動脈ステント治療で発生頻度が高く、over-sized ステントが危険因子である。
非解離性胸部・胸腹部大動脈瘤の手術成績日本胸部外科学会、2017年(非解離性胸部大動脈瘤):[43]
待機的手術の在院死亡率:
大動脈基部手術:4.7%(50/1066)
上行大動脈手術:3.8%(54/1406)
上行・弓部大動脈手術:4.7%(104/2193)
胸部下行大動脈手術:5.3%(14/264)
胸腹部大動脈手術:9.0%(33/365)
胸部大動脈ステントグラフト留置術(分枝再建なし):2.4%(48/1970)
オープンステント術:5.1%(65/1267)
緊急手術の在院死亡率:
大動脈基部手術:19.4%(7/36)
上行大動脈手術:21.2%(11/52)
上行・弓部大動脈手術:18.6%(18/97)
胸部下行大動脈手術:20.0%(8/40)
胸腹部大動脈手術:25.0%(9/36)
胸部大動脈ステントグラフト留置術(分枝再建なし):21.0%(59/281)
オープンステント術:28.9%(28/97)
治療の中止
通常、瘤が縮小、治癒することはなく、治療を中止することはない。
専門医相談のタイミング
手術が必要な場合、血圧のコントロールが不良な場合、禁煙が困難な場合は専門医に紹介する。
最大径50 mm以上の紡錘状瘤、嚢状瘤の場合
半年~1年間で5 mm以上の急速拡大を認める場合
瘤に一致して痛み、圧迫感、違和感などの症状を伴う場合
瘤が原因と思われる圧迫症状を呈する場合
血圧のコントロールが不良な場合
禁煙が困難な場合
入院適応
下記が入院適応である。
最大径55 mm以上の紡錘状瘤、嚢状瘤の場合には55 mm以下でも考慮
半年間で5 mm以上の急速拡大を認める場合
瘤に一致して痛み、圧迫感、違和感を伴う場合
喀血や吐血を伴う場合
発熱を伴い感染性瘤が疑われる場合