慢性腎臓病
- 慢性腎臓病(chronic kidney disease、CKD)は慢性的に腎臓の異常のある疾患のすべてを包含する疾患概念である。
- CKDの重症化により末期慢性腎不全への進行とともに、心血管疾患(cardiovascular disease、CVD)発症のリスクも上昇する。
- CKDには腎に異常を来す一次性あるいは二次性の原腎疾患があり、診療においては原腎疾患の管理が優先される。
- ついで、CKDの進行に関わる共通の治療を実施する。
- 近年、加齢とともに経時的に腎機能が低下しCKDと診断される、いわゆる生活習慣病関連のCKDを伴う高齢者の増加がある。
- 健診での蛋白尿などの腎障害の存在が疑われる場合、血清クレアチニンをもとに推算される糸球体濾過量(GFR)が60未満と推定される場合、その他の異常がなくともCKDの存在を疑い、再検査を含めた評価を行う(推奨度1)。
- GFR低下がある場合、尿検査(蛋白尿、血尿、円柱尿の有無)を実施し、病歴の聴取によりその原因検索を行う。
- CKDの定義に従い、腎障害の指標(蛋白尿(0.15 g/24時間以上;0.15 g/gCr以上)アルブミン尿(30 mg/24時間以上;30 mg/gCr以上)、尿沈渣の異常、尿細管障害による電解質異常やその他の異常、病理組織検査による異常、画像検査による異常、腎移植の既往)、腎機能の低下(GFR60 mL/分/1.73 m2未満)のいずれかが3カ月を越えて持続する場合CKDと診断する。
- 日本人におけるGFR推算式:eGFR:推定糸球体濾過量 (日本腎臓学会計算式)
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、高尿酸血症、過去の検尿異常の既往などCKD発症の危険性の高い場合には数カ月に1回は検尿、血清クレアチニン検査を実施し、CKDの早期発見に努めることを強く勧める(推奨度2)。
- 血清クレアチニン値は腎機能以外に、食事および筋肉量による生成、尿細管分泌、腎外排泄により変動する。抗癌剤の投与計画策定時など、腎機能による微細な投与量の決定が必要な場合にはシスタチンCとクレアチニンの両者を使用したGFRの推算式を用いるか、蓄尿によるGFRの測定により正確な腎機能の評価を実施すべきである(推奨度2)。
- 重症度分類によるGFRステージ、蛋白尿(アルブミン尿)ステージの進行は、CVDによる死亡、末期慢性腎不全による腎代替療法開始と相関があるため(表2<図表>)、ステージ進行抑制を目指した介入を実施することが強く勧められる(推奨度1)。
- 推算GFR(eGFR)が3カ月以内に30%以上の低下がある場合、蛋白尿と同時に尿潜血が陽性となる場合、尿蛋白が0.5 g/日以上もしくは尿蛋白/Cr比0.5 g/gCr以上が継続する場合、eGFRが年間5 mL/分以上低下する場合、腎臓内科へのコンサルトが勧められる(推奨度1)。
- 尿蛋白が陽性の患者:1日尿蛋白が0.5 g以上、もしくは尿蛋白/Cr比0.5 g/gCr以上が継続する場合
- 尿蛋白が上記未満であっても尿潜血を伴う場合
- 尿潜血のみ陽性の患者:若年で尿沈渣に変形赤血球が多く存在する場合や、病的円柱を認めるなど糸球体疾患を積極的に疑う場合(これに関しては明確なエビデンスは出されていないが、臨床的な経験からのエキスパートオピニオンである。詳細は、原因疾患の評価: >詳細情報 参照)
- CKDのステージ進行抑制には適切な生活運動指導、食事指導が必要で、生活習慣の改善には複数の医療従事者による教育指導が有用である(推奨度1)。
- 喫煙はCKDの発症および進行に関連する独立した危険因子であり、CVDの発症リスクを増加させることから、CKD患者に禁煙指導を行うことは強く勧められる(推奨度1)。
- ステージG3~G5のCKD患者では、腎機能障害の進行抑制のため、病態に応じたたんぱく質摂取量を考慮する必要がある。「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」では、尿蛋白を減少させる目的か腎機能低下を抑制する目的で、0.6~1.0 g/kg/日のたんぱく質摂取量の調整を勧めている(推奨度2、表3<図表>、表4<図表>)が、過度のたんぱく質摂取制限はサルコペニア等の誘発の危険があり、慎重に適応を考慮する。また食事療法には、生命予後の改善やQOLの維持を目指して適度な運動の併用が勧められる(推奨度1)。
- 食塩摂取過剰は血圧を上昇させ、尿蛋白を増加させることがわかっている。したがって、CKDステージ進行抑制のため、1日6 g未満(3 g以上)の食塩量が推奨される(推奨度1)。
- CKDステージG3b以降で、複数回の検査でHb値10 g/dL未満となった患者には、赤血球造血刺激因子製剤(erythropoiesis stimulating agent 、ESA)やHIF-PH阻害薬の投与が推奨される(推奨度2)。Hb値の目標下限値は10 g/dLを目安とし、13 g/dL以上を目指さないこととする。
- 貧血を有するCKDにおいて鉄欠乏が認められれば鉄剤を投与することが推奨される(推奨度2)。同時に鉄欠乏を来す要因の精査を必要に応じ実施する。
疾患情報
ポイント:
- 慢性腎臓病(chronic kidney disease、CKD)の定義:2002年にK/DOQIが定めた定義が使われている[2]。
- NKF‒K/DOQI により2002年に提唱されたCKDの重症度分類は、2002、2009、2011、2020年の見直しを経て、現在、日本人用に改変された定義が用いられている。2017年時点で世界に6億9750万人(人口の9.1%)のCKD患者がおり[3]、日本では20歳以上人口の14.1%がCKDに該当する。したがって、CKDは、頻度の高い状態で、早期発見と病気の進行の予防を主眼にした管理が必要となる。
- CKDの頻度は高齢者ほど高い。2015年のわが国のCKD患者数は1480万人と推計され[4]、2005年からの増加の主因は高齢者人口の増加である。CKDは高齢者で頻度が高く、その多くは腎硬化症(腎内小動脈や細動脈の硬化性病変による腎障害)が主体と思われる[4][5]。
- なお、GFR 45 mL/分/1.73 m2未満の患者では、全死亡、心血管死亡、末期腎不全への進行および急性腎障害の罹患率が急激に増加することも知られている。末期腎不全、心血管疾患(cardiovascular disease、CVD)の発症の危険は糸球体濾過量(GFR)が低下するほど高くなり、尿蛋白(尿アルブミン)が増加しても高くなる。そのため、CKDの重症度はGFRと尿蛋白(尿アルブミン)によって定義づけられている。
問診・診察のポイント
- CKDは血清クレアチニン測定と尿検査で、簡便に診断できる。それゆえ、このような概念が提唱された。診断後の治療・管理を適正に行うためには以下の3ステップに沿って評価を行うことが必須である。
- CKDの定義に従い、腎障害の指標[蛋白尿(0.15 g/24時間以上;0.15 g/gCr以上)アルブミン尿(30 mg/24時間以上;30 mg/gCr以上)、尿沈渣の異常、尿細管障害による電解質異常やその他の異常、病理組織検査による異常、画像検査による異常、腎移植の既往)]、腎機能の低下(GFR60 mL/分/1.73 m2満)のいずれかが3カ月を越えて持続する場合CKDと診断する。
- 1:CKDの診断と重症度判定(重症度分類にしたがう)
- 血清クレアチニンの測定と推算GFR(eGFR)の計算
- 正確なGFRの評価にはクレアチニンとシスタチンCの同時算定によるeGFRによる腎機能の判定が望ましい。
- 2:原疾患の鑑別(CKDに至った原因を探る。狭義の腎疾患[IgA腎症、膜性腎症、腎硬化症など]または二次性腎疾患[糖尿病性腎症、ループス腎炎など])
- 3:合併症と危険因子の有無と評価(①高血圧、②脂質異常、③肥満、④糖尿病、⑤メタボリックシンドローム、⑥高尿酸血症、⑦貧血など)
- 上記1~3を常に念頭に置きながら病歴を取り、身体診察を行う。
- 血圧(程度、左右差)
- 血管雑音(頚部、腹部など)
- 貧血の有無
- 胸部聴診(心雑音、脈不整、肺雑音の聴取)心拡大の有無
- 腹部で腫大した腎臓または膀胱に触れないか
- 浮腫の有無
診断
ポイント:
- 下記のCKDの定義に沿って診断する。
CKDの定義:
- 下記の1か2が3カ月を越えて持続する場合は、CKDとする。
- 1:腎障害の指標 → 蛋白尿(0.15 g/24時間以上;0.15 g/gCr以上)アルブミン尿(30 mg/24時間以上;30 mg/gCr以上)が重要
- 尿沈渣の異常
- 尿細管障害による電解質異常やその他の異常
- 病理組織検査による異常
- 画像検査による異常
- 腎移植の既往
- 2:GFRの低下 糸球体濾過量(GFR)<60 mL/分/1.73 m2
CKD診断のための評価:
- 日常診療において、日本人のGFRは以下の推算式で算出する(eGFR)。
eGFR(mL/分/1.73 m2)=194×Cr-1.094×Age-0.287(女性は×0.739)
CKDを疑う患者ではGFRと蛋白尿定量検査から重症度を評価することが強く推奨される(推奨度1)。
- 413人のイヌリンクリアランス(GFRのゴールドスタンダード)からGFRの推算式を導いた。この推算式では血清クレアチニン、年齢、性別の3つの要因からGFRを計算できるようになっており、350人で検証が行われた。これが現在の日本で標準使用されるGFRの推算式となっている。血清クレアチニンから計算したeGFRをeGFRcreatに表す(O)[6]。
- CKDの早期発見・予防・治療標準化進展阻止に関する調査研究班は、イヌリンクリアランス(GFRのゴールドスタンダード)と血清シスタチンC濃度からGFRの推算式を導いた(O)[7]。シスタチンCを用いて計算したeGFRをeGFRcysと表す。筋肉量の多い人や少ない人では血清クレアチニンを用いたeGFRより正確である(推奨度1)。
男性:eGFRcys(mL/分/1.73 m2)=(104×Cys-C-1.019×0.996年齢(歳))-8
女性:eGFRcys(mL/分/1.73 m2)=(104×Cys-C-1.019×0.996年齢(歳)×0.929)-8
Cys-C:血清シスタチンC濃度(mg/L)
- 血清CysC に基づくGFR 推算式の正確度は血清Cr に基づく推算式と同程度であるが、血清シスタチンC 値は筋肉量や食事、運動の影響を受けにくい特徴がある。そのため、筋肉量が極端に少ない患者(四肢切断やサルコペニアなど)や筋肉量が極端に多い症例(アスリートなど)ではeGFRcreatよりeGFRcysのほうがより実際のGFRに近い値となる。
- 国際的には2021年に発表された人種を問わないCKD-EPI eGFR cre-Cys式[8]も日本人では過大評価となるために日本人係数0.908が必要である。
- 最も正確なGFRの評価は、(eGFRcre+eGFRcys)÷2である。
- 尿蛋白およびアルブミンの評価:糖尿病を認めない場合は、尿蛋白と尿中クレアチニンを同時に測定して、クレアチニン1 g当たりの尿蛋白量(g/gCr)を計算する。また、糖尿病を認める場合は、尿中アルブミンと尿中クレアチニンを同時に測定してクレアチニン1 g当たりのアルブミン量(mg/gCr)を計算する。(日本では尿中アルブミンは糖尿病のみ保険適用(尿中アルブミン検査は糖尿病患者に対する、早期腎症発見目的での適応であり、糖尿病性腎症確定後には適応ではない)があるため、糖尿病以外では尿蛋白を使って評価する。尿中アルブミンと尿中クレアチニンを同時に測定して、その比を出すことのできる試験紙(オーションスクリーン®:アークレイ株式会社、エームス尿試験紙:シーメンスヘルスケアなど)がある。この試験紙はCKDであれば糖尿病でなくても保険適用される。目視でA1、A2、A3の評価が可能である。)
- 治療介入による蛋白尿・アルブミン尿の減少の程度は、CVD発症の抑制と相関がある。このため、随時尿における定量試験では、同時に尿中Crを測定して、尿アルブミン/Cr比または尿蛋白/Cr比を求めて評価する。尿アルブミン/Cr比30 mg/gCr以上または尿蛋白/Cr比0.15g/gCr以上であれば適切な治療を開始することが強く勧められる(推奨度1)。
- 診断、重症度評価を行う。GFRによるステージをGで表し、尿蛋白(または尿アルブミン)によるステージをAで表す。GとAのステージの組み合わせでCKDの重症度が定義されている。(重症度評価参照: >詳細情報 )
- これらの検査の結果、上記のCKDの定義に沿って診断をする。G3a~G5または、A2~A3のいずれかが3カ月を越えて持続する場合はCKDの診断となる。
- なお、試験紙法での目安では、-がA1、±がA2、1+~がA3に相当する。
- 注)尿蛋白(±)の扱いについて
- 従来、尿蛋白(±)は陰性と同様に扱っていたが、尿蛋白(±)の中に尿蛋白ステージA2がかなりの割合で含まれていることが分かった。そのため、尿蛋白(±)では陰性と考えず慎重に対処する必要がある。健診では生活習慣の改善・指導を行い、翌年も尿蛋白(±)であれば医療機関受診が勧められている[10]。医療機関では尿蛋白(±)では必ず尿蛋白(アルブミン)と尿クレアチニンを定量して、その比をとって評価する。
- 参考:希釈尿では試験紙法の±の54.7%がA2、8.1%がA3、逆に濃縮尿では±の37.2%、≧+の8%がA1であるとの報告もある[11]。
血尿の評価:
- 尿潜血反応陽性の場合には尿沈渣にて赤血球の存在を確認する。赤血球を認めれば血尿である。その場合、赤血球形態や円柱(赤血球円柱、上皮円柱、顆粒円柱など)により、血尿が糸球体由来と考えられれば腎臓内科へコンサルトする。尿中の変形赤血球の糸球体疾患診断における感度は52%、特異度は98%とされている[12]。血尿とともに蛋白尿陽性の場合も、糸球体疾患である可能性があるため腎臓内科へコンサルトする。
原因疾患の評価
ポイント:
- CKDの治療を行う場合、原疾患を明らかにする必要がある。
- 原疾患が明らかとなった時点で原疾患の治療を優先し、同時にCKDの共通する進行危険因子に対する治療を行う。
- 近年のCKDは高齢者が多く、CKDの原疾患以外に、様々な腎障害進行リスクとなる併発症を有していることが多い。これらの検討も同時に実施する必要がある。
- 尿蛋白1 g/gCr以上では狭義の腎疾患(IgA腎症、膜性腎症など)の可能性が高く、腎機能の予後も悪い可能性がある。腎生検の適応を慎重に判断する。
- 尿蛋白(アルブミン)量が多いこととGFRが低いことは、腎予後および心血管疾患の発症の共通の危険因子である。
- GFRについては、値そのものよりも経時的な変化を重視すべきである。3カ月以内に30%以上低下する場合、年間5以上mL/分/1.73 m2の低下は要注意である。
- 原疾患とCKD重症度を合わせて、以下の様に表記すべきである。
- CKD G3aA2(IgA腎症)
- CKD G4A3(糖尿病性腎症)
- CKD G4A1(腎硬化症)
原因疾患の評価:
- ポイント:
- 原因疾患あるいは臨床症候として、蛋白尿陰性~軽度陽性で高齢者、長期の高血圧の病歴があれば腎硬化症、虚血性腎症、蛋白尿>0.5 g/日では糖尿病性腎症の初期、慢性糸球体腎炎(IgA腎症など)、蛋白尿>3.5 g/日のネフローゼ症候群(微小変化型ネフローゼ症候群、糖尿病性腎症、膜性腎症、IgA腎症、ループス腎炎など)、排尿異常や腰痛を伴う場合には腎後性腎不全(両側尿路結石、後腹膜線維症、尿路悪性腫瘍など)、多発性囊胞腎などである。ほかに血管炎、膠原病に伴う腎疾患(ループス腎炎など)悪性腫瘍の合併時の腎障害などがある。
- これらの疾患を尿所見(24時間蓄尿による蛋白尿排泄量)、エコー所見、病歴などにより評価し、必要に応じて下記の代表的な全身疾患に伴う二次性CKDの鑑別のための評価例および代表的な遺伝性CKDの鑑別のための評価例に記載の検査を追加する。
鑑別疾患表:
頻度高
- 腎硬化症
- 糖尿病性腎症
- 慢性糸球体腎炎(IgA腎症など)
- 虚血性腎症(腎硬化症+腎動脈狭窄症)
- 腎後性腎不全
比較的まれ
糸球体疾患:
- 巣状糸球体硬化症
- 膜性腎症
- 膜性増殖性糸球体腎炎
全身性疾患に伴う糸球体疾患:
- アミロイドーシス
- ループス腎炎
- 血管炎症候群(顕微鏡的多発血管炎(MPA)、多発血管炎性肉芽腫症(ウェジナー)(GPA)、アレルギー性肉芽腫性血管炎(EGPA))、くすぶり型の場合には、CKDとなる
- 糖尿病性腎臓病(DKD)という病名について
- 糖尿病性腎症(diabetic nephropathy、DN)は、もともと糖尿病性糸球体硬化症という組織学的特徴を有する腎疾患に対する病名であった。しかし、臨床現場では糖尿病を合併したCKDで臨床的にほかの腎疾患が強く疑われない場合にDNと診断していたのが現実である。一方、以前から糖尿病性腎症の典型例とされる経過(微量アルブミン尿→顕性アルブミン尿→GFRの低下)と異なり、顕性アルブミン尿を伴わないままGFRが低下する患者の存在が知られていた。最近になって、このような非典型例が世界的に増加していることが示された。これらの非典型例には加齢や高血圧・脂質異常を背景とした動脈硬化(腎硬化症)が関与していると考えられている。このようなことから、欧米ではこれまで使用してきたDNに代わり、非典型的な糖尿病関連腎疾患を含む概念であるdiabetic kidney disease(DKD)という病名が使用されるようになった。日本においても日本腎臓学会と日本糖尿病学会の合意のもとDKDに「糖尿病性腎臓病」という日本語名を当てて使用することになった(日本腎臓学会編「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」[13])が、2023年時点では糖尿病性腎症と混同しやすいため、DKDの日本語病名は糖尿病関連腎臓病という呼称へと変更が検討されている。
遺伝性腎症:
- 常染色体優性多発性囊胞腎(ADPKD)
- アルポート症候群、Fabry病
泌尿器科系疾患:
- 閉塞性尿路疾患
- 前立腺肥大症など
- 膀胱尿管逆流症
- 代表的な全身疾患に伴う二次性CKDの鑑別のための評価例:
- 糖尿病(網膜症、神経障害の有無、血糖管理不良)、全身性エリテマトーデス(抗核抗体、抗dsDNA抗体、C3、C4など)、多発性骨髄腫(血清M蛋白、尿中Bence-Jones蛋白など)、悪性腫瘍(便潜血、消化管内視鏡検査、腫瘍マーカーなど)の鑑別が大事である。
- 代表的な遺伝性CKDの鑑別のための評価例:
- 家族歴、多発性囊胞腎(腎超音波検査)、Fabry病(α-ガラクトシダーゼ活性)、Alport症候群など
- 薬剤性CKDの薬剤例:
- 解熱鎮痛薬の連用、ビタミンD 製剤、カルシウム製剤、抗菌薬、シスプラチン製剤などの薬剤は腎障害を生じる可能性があるため、注意して使用する。
腎生検:
- ポイント:
- 腎生検は主に糸球体疾患の病理組織診断を行うために必須の検査である。
- 腎生検はびまん性の腎疾患の形態学的な確定診断に必要な評価方法である。しかし、侵襲的な評価方法であるため、適応と禁忌を理解し、実施は慎重に検討しなければならない。
- 以下のような場合、腎生検の施行を考慮する必要がある(推奨度2)。
1.タンパク尿のみが陽性の患者:1日尿蛋白が1 g以上、もしくは尿蛋白/Cr比1 g/gCr以上が継続する場合。1日尿蛋白が0.5 g以上、もしくは尿蛋白/Cr比0.5 g/gCr以上が継続する場合で、遺伝性腎炎、異常蛋白(Mタンパク)に伴う腎臓病を積極的に疑う場合。起立性蛋白尿や一過性蛋白尿が否定された場合にも腎生検を考慮する。
2.タンパク尿と血尿の双方を伴う場合
3.尿潜血のみ陽性の患者:尿沈渣に変形赤血球が多く存在する場合で腎不全の家族歴や感冒時の肉眼的血尿など、IgA腎症、菲薄基底膜病、Alport症候群を積極的に疑う場合
- 腎生検ガイドブック2020参照
- 適応:
- 超音波検査で腎の萎縮がなく、腎組織をみることにより治療上のメリットが大きく、かつ禁忌事項がないと判断したときには積極的に腎生検を考慮する。
- 高齢者で尿蛋白陰性(A1)でGFRのみ低下している場合は腎硬化症が疑われる。この場合は腎生検の適応は少ない。
- 糖尿病合併CKDでは、糖尿病性腎症以外の腎臓病を疑う場合には積極的に腎生検を考慮する。
- 腎生検のハイリスク因子:
- 1:出血傾向(ワーファリンや抗血小板薬服用中の場合は薬剤中止後適正な間隔をおいて実施)
- 2:単腎、萎縮腎(必要なら開放腎生検や鏡視下腎生検は可能)
- 3:息止めのできない患者
- 4:非協力的/安静が保てない患者
- 合併症:
合併症の評価
ポイント:
- 合併症としては、CKDの成因に関係する合併症とCKDの進行による合併症があり、それぞれの評価が必要である。
介入可能なCKDの発症ならびに腎機能悪化進行の危険因子の評価:
- CKD発症・進展の危険因子(高度蛋白尿、高血圧、脂質異常、肥満、糖尿病、メタボリックシンドローム、高尿酸血症、便秘、貧血など)を明らかにする。
CKDの成因に関係する合併症の評価:各原疾患の項を参照のこと
- 二次的にCKDを来し得る病態(糖尿病、長期の高血圧症、全身性エリテマトーデス、多発性骨髄腫など)の診断
- 腎動脈狭窄の有無(超音波ドプラー法)
- 動脈硬化性変化、高血圧性変化、糖尿病性網膜症の評価(眼底検査)
- 多発性囊胞腎に合併する脳動脈瘤の診断(MRA)
- 皮膚病変などの評価(白血球破砕性血管炎、アレルギー性紫斑、網状皮斑、潰瘍、被角血管腫など)
CKDの進行に伴う合併症(保存期慢性腎不全の合併症):
- 代謝性アシドーシスの有無:重炭酸塩濃度測定または動脈血ガス、静脈血ガス(HCO3-濃度のみ有用)
- 腎性貧血の有無:
- Fe、TIBC、フェリチンも測定し、鉄欠乏の有無は必ずチェックする
- 慢性腎臓病に伴う⾻ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の状態:
- 血清Ca、P、血漿intact-PTH
- 心疾患、心不全など:
- 胸部X線検査(後→前、側面)、ECG、心臓エコー検査
尿毒症症状の出現:
- CKDの進行に伴い、本来腎臓から排泄されるべき様々な尿毒症物質蓄積に伴う合併症がある。
- 具体的には、血小板機能低下による出血傾向、嘔気、嘔吐などの消化器症状、末梢神経障害によるしびれ。体液量増加に伴ううっ血性心不全、末梢血管透過性亢進に伴う肺水腫(尿毒症肺)、尿毒症性心外膜炎による心タンポナーデ。
- 尿毒症物質について:
- 尿毒症は、健常な腎臓から排泄されるべき生体内の不要な化合物が、腎不全により蓄積することにより生じる。この化合物が生物学的機能あるいは生化学機能に悪影響を及ぼす場合、尿毒症毒素とされる。
- 尿毒症毒素はその分子量やたんぱく質との結合性から主に3つに分類されている[15]。すなわち、①尿素に代表される、水溶性小分子量物質(分子量<500Da)でグアニジノ化合物であるメチルグアニジン(MG、分子量73Da)やグアニジノコハク酸(GSA、分子量175Da)などは、消化器症状、中枢神経症状、末梢神経障害、貧血、血小板機能低下などを呈する[16]。②β2ミクログロブリンに代表される、中分子量物質(分子量>500Da)で、β2ミクログロブリンは長期透析患者の合併症である透析アミロイドーシスの前駆物質として知られている[17]。③インドキシル硫酸やホモシステインに代表される蛋白結合物質が知られており、インドキシル硫酸(分子量251Da)は腸管内で蛋白の加水分解により生成したトリプトファンから、大腸菌などに含まれるトリプトファナーゼによってインドールに代謝される。インドールは腸管から吸収され肝臓で酸化されインドキシルとなり、さらに硫酸抱合によりインドキシル硫酸となり血中に放出される。インドキシル硫酸は約90%がアルブミンと結合しており慢性腎不全で腎クリアランスが低下するため、血中濃度が著明に上昇する。インドキシル硫酸は腎不全を進行させる因子としても知られ、経口吸着剤(AST-120:クレメジン)を投与しインドキシル硫酸の前駆物質であるインドールを腸内で吸着し血清および尿中インドキシル硫酸の濃度を低下させることで、腎機能障害の進行を抑制する可能性がある。
重症度・予後
ポイント:
- 尿蛋白量の多い例>0.5(g/gCr)、経時的に腎機能の低下(3カ月以内に30%以上、1年で>5 mL/分/1.73 m2以上低下)する例、急性腎障害を併発した場合では腎機能予後の悪い可能性が高い。尿蛋白量と低いeGFRは、心血管疾患の危険因子でもある。
- CKDに至った原因の重症度が予後に大きく影響するので、原疾患の病態の正確な把握も重要である。
CKDの重症度:
- G区分:
- G1:GFR≧90
- G2:GFR 60~89
- G3a:GFR 45~59
- G3b:GFR 30~44
- G4:GFR 15~29
- G5:GFR<15
- GFRの単位はmL/分/1.73 m2 (体表面積1.73 m2で補正した値)
- A区分:
- A1:<0.15(<30)
- A2:0.15~0.49(30~299)
- A3:≧0.5(≧300)
- CKDはCGA分類を行う(C:原因疾患、G:GFR、A:尿蛋白量(尿アルブミン量))。例えば、IgA腎症が原因によるCKDで糖尿病合併している場合でGFR 42 mL/分/1.73 m2で尿蛋白が1.2 g/gCrであれば、「IgA腎症によるCKD G3bA3、糖尿病合併あり」と表現する。また腎予後に影響するため原疾患を示し、合併症がある場合にも注意喚起するための配慮が必要である。
予後:
- GFR 45 mL/分/1.73 m2未満まで進行した場合、尿蛋白が0.5 g/gCr以上の状態では全死亡、心血管死亡、末期腎不全への進行、急性腎障害の発症率が急激に増加する[18]。
- 糸球体障害においては蛋白尿の程度が予後と関連することが知られている。尿蛋白定量検査を適宜実施し、経時的な増加のあるときには腎臓専門医との相談が必要である。
治療
ポイント:
- 年間のeGFR低下が5以上、尿蛋白量の増加など経時的な腎機能、重症度の進行、進行のリスク因子のコントロール困難など必要に応じて腎臓専門医と相談しながら、介入可能なCKD危険因子の治療を行う。
- 脱水、過降圧などによる急激な血圧低下、薬剤性腎障害など急性腎障害を発症した場合には腎臓専門医と相談のうえ、対応する。
- ループス腎炎
- 尿所見が軽微、経年的な腎機能の変化が軽微な場合などでは、CKDの重症化、腎機能の悪化因子などを明らかにして、介入可能なものに対しては適切な治療を行う。
- 適切な生活運動指導、食事指導が必要で、生活習慣の改善には複数の医療従事者による教育指導が有効である[19]。
- また、必要に応じて適切な時期に専門医への紹介を行う。(詳細:「専門医相談のタイミング: >詳細情報 」)
緊急対応:
- CKDで以下を認める場合は、急性腎障害(AKI)が合併した可能性を考え、緊急対応を行う。
- 48時間以内にSCr値が≧0.3 mg/dL 上昇した場合
- SCr値が7日前以内の既知あるいは予想される基礎値より≧1.5倍の増加があった場合
- 尿量が6時間にわたって<0.5 mL/kg/時間に減少した場合
腎臓リハビリテーション:
- 腎臓リハビリテーションとは腎疾患や透析医療に基づく身体的・精神的影響を軽減させ、症状を調整し、生命予後を改善し、心理社会的ならびに職業的な状況を改善することを目的として、運動療法、食事療法と水分管理、薬物療法、教育、精神・心理的サポートなどを行う、長期にわたる包括的なプログラムである。単に運動療法を行うことをさすのではなく、リハビリテーション本来の意味であるCKD患者の日常生活への復帰を促し、社会生活継続のサポートを様々な専門的医療従事者が協力して実施するものである[20]。
- すべてのCKD患者に対し、CKDのステージに応じた腎臓リハビリテーションの実施が望ましい。
- 高血圧
- 脂質異常
- 肥満
- 糖尿病
- 代謝性アシドーシス
- 貧血
- 腎毒性物質(抗菌薬、NSAIDs、抗がん剤など)への曝露
- 喫煙
- 便秘
- その他
介入不可能なCKD危険因子:
- 加齢
- 低出生体重
- 腎容積減少(先天的あるいは手術による)
- その他
介入可能なCKD危険因子への介入
医療連携:
- 近年増加している生活習慣病関連の疾患が原因によるCKD患者では、CKDステージの進行を抑制する治療介入は多岐にわたる。
SGLT阻害薬:
- SGLT2阻害薬は、糖尿病合併・非合併にかかわらず、アルブミン尿(蛋白尿)の有無にもかからず、CKD患者において腎保護効果を示すため、リスクとベネフィットを十分に勘案して積極的に使用を検討する。
- 推算GFR 15 mL/分/1.73 m2未満では新規に開始しないが継続投与して15 mL/分/1.73 m2未満となった場合には、副作用に注意しながら継続する。
- 食事摂取量の不足、栄養不良状態、飢餓状態、激しい筋肉運動、過度のアルコール摂取、副腎機能不全、下垂体機能不全、シックデイなどの状況下では低血糖や正常血糖ケトアシドーシスなどの代謝異常を生じる可能性があるため、このような場合にはSGLT2阻害薬の中止を考慮する。
- 食事摂取ができない手術が予定されている場合には、術前3日前から休薬し、食事が十分摂取できるようになってから再開する。
- 利尿薬を使用しているCKD患者や血糖コントロールが極めて不良な糖尿病患者では、脱水や急性腎障害(AKI)を来す可能性があるため注意が必要である。
- 高齢CKD患者への投与の際には、サルコペニアやフレイルの発症・増悪に注意する。
- SGLT2阻害薬は糖尿病“非”合併CKD患者においても尿路・性器感染症の発症・増悪が懸念されるため、投与後は注意を払う必要がある。
- 処方例:CDK患者の治療例
- 開始後早期にeGFR の低下(eGFR initial dip)を認める場合があり、早期(2週間~2カ月程度)にeGFRを再評価する。
- 利尿効果があり、処方後に脱水に十分に注意し、適切な水分摂取につとめる。
- フォシーガ錠10mg 1錠 分1 朝食後 [㊜慢性腎臓病]
高血圧:
- 糖尿病合併と蛋白尿陽性CKDでは診察室の血圧130/80 mmHg以下を目指す。ただし、家庭血圧では収縮期・拡張期血圧ともに5 mmHgずつ低い値を目標とする。
- 糖尿病合併と軽度以上の蛋白尿(尿蛋白量0.15 g/gCr以上、A2およびA3)を呈するCKD患者では、ACE阻害薬/ARBを第1選択薬にして、降圧とともに尿蛋白減少を目指す。
- 降圧目標に達しない場合には、長時間作用型Ca拮抗薬または少量の利尿薬(GFR 30 mL/分/1.73 m2以上ならサイアザイド系利尿薬、それ以下なら長時間作用型のループ利尿薬)を併用する。
- 処方例:軽度以上の蛋白尿(尿蛋白量0.15 g/gCr以上、A2およびA3)を呈するCKD患者の高血圧治療例
- 蛋白尿減少効果・腎保護効果の明らかなRA阻害薬で開始し、単剤では血圧コントロール不十分な場合、下記の如く併用していく。
- 1) ブロプレス錠 4mg 0.5~2錠 分1 朝食後 次回外来まで [㊜腎実質性高血圧症]
- 3) ナトリックス錠1mg 1錠 分1 [㊜高血圧症]
- 糖尿病非合併で尿蛋白陰性(A1)のCKD患者(高齢の腎硬化症が多く含まれる)では、病態に応じて降圧薬を選択する。このカテゴリーの患者の降圧目標は140/90 mmHg未満である。降圧目標に達しなければ、適宜、他の作用機序の降圧薬を併用していく。(本態性高血圧参照)
- eGFR<30 mL/分/1.73m2では、ACE阻害薬/ARBによる腎機能悪化や高K血症に充分に注意し、これらの副作用出現時は減量、中止も考慮されるが、CVDイベント予防や生命予後の観点から、一律中止するのでなく、可能な範囲での継続が望まれる。
- 処方例:尿蛋白陰性、非糖尿病例のCKD患者の高血圧治療例
- 上記に基づき、下記の処方を1剤から始め、併用していく。
- 1) アダラートCR錠 20mg 1錠 分1 朝食後 [㊜高血圧症]
- 2) アダラートCR錠 20mg 2錠 分2 朝夕食後 [㊜高血圧症]
- 3) アダラートCR錠 20mg 2~4錠 分2 [㊜高血圧症]
- 4) ダイアート錠 30mg 1~2錠 分1 朝 [㊜腎性浮腫]
- 5) オルメテックOD錠 20mg 10~40mg 分1~2 [㊜高血圧症]
- CKD患者を対象に異なる降圧目標によるCKD進行のリスク/心血管疾患発症のリスクを比較した11のRCT(9,287人)のメタ解析(M)[24]。尿蛋白陰性(尿蛋白≦0.22 g/gCr)では、厳格降圧が通常降圧より腎の複合エンドポイントを抑制したという証拠はなかった。しかし、尿蛋白陽性(>0.22 g/gCr)では厳格降圧は通常降圧より腎の複合エンドポイントを抑制した。厳格降圧と通常降圧で心血管疾患や死亡に有意差はみられなかった(推奨度2)。
- 「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」[1]では、糖尿病を合併していないCKDでは、目標血圧140/90 mmHg未満を推奨している。尿蛋白陽性では、目標血圧130/80 mmHg未満を推奨している。糖尿病を合併している場合には、尿蛋白陽性・陰性とも目標血圧130/80 mmHg未満を推奨している。
- 複数のRCTで、ACE阻害薬やARBが正常血圧の患者でも腎症の進行を抑制することが示されている。その1つであるMakinoらの2007年の研究では、正常血圧で微量アルブミン尿を認める患者で、テルミサルタンを80 mg内服した群の11%、テルミサルタンを40 mg内服した群の21%、プラセボを内服した群の44%で、平均1.3年間のフォローアップ期間に30%以上の尿中アルブミン増量または顕性アルブミン尿を認めるようになった(R)[25]。正常血圧の微量アルブミン尿患者に対して、ACE阻害薬やARB は腎症の進行を抑制することが示されており、正常血圧の患者にも血圧に注意しつつ投与することが推奨される。
- 蛋⽩尿抑制を考慮した選択肢としてRAS阻害薬やSGLT2阻害薬の有⽤性が期待される。
- LDL-cholesterol<120 mg/dL(可能ならば<100 mg/dL)、non-HDL-cholesterol<150 mg/dLを目標に治療を開始し、生活習慣の改善で目標を達成するよう試みるが、目標に達しない場合にはスタチンなど薬物療法を行う[26]。冠動脈疾患の既往がある場合や二次予防の場合はLDL-C<100 mg/dL、non-HDL-C<130 mg/dLを目標にする[27]。CKD患者におけるエビデンスはないが、CKDは明確な冠動脈疾患の危険因子なので、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」に準拠する値を提案する[13]。
- 処方例:CKD患者の脂質異常症の治療例
- 1) リピトール錠 10mg 1錠 分1 朝食後 次回外来まで [㊜高コレステロール血症]
- 治療の詳細は、高LDLコレステロール症 の項を参考にしてほしい。
肥満:
- 食事と身体活動の改善により適正体重を維持する。
- 治療の詳細は肥満の項を参考にしてほしい。
- CKD患者の高尿酸血症の薬物治療には尿酸生成阻害薬と尿酸再吸収阻害薬がある。腎機能障害時の高尿酸血症では、尿酸排泄低下によることが多いが、治療にはアロプリノールに代表される尿酸生成阻害薬がおもに使用されてきた。
- 日本人のコホート研究において、血清尿酸値は血清Cr 値の上昇と関連しており、また、特に女性において高尿酸血症(尿酸値6.0 mg/dL以上)は末期腎不全の危険因子であることが報告されている[28]。高尿酸血症の治療はCKD患者における腎機能低下を抑制し、蛋白尿を減少させる可能性がある[1]。また、いくつかの臨床研究のメタ解析ではアロプリノールによる尿酸低下療法はCKDの進行を抑制する可能性がしめされた[29][30][31][32]。ドチヌラドは新規に開発された尿酸再吸収阻害薬で尿酸値低下には有用であるが、腎機能への影響などエビデンスにとぼしい。尿酸低下治療のCKDにおける有益性とリスクを評価するためには、充分なパワーをもった無作為化試験が必要とされている。
- フェブキソスタットとトピロキソスタットは日本で開発された高尿酸血症治療薬で、アロプリノールのように腎機能低下時に投与量を減量する必要はない。そのため、これらの薬剤を用いたCKDを対象とした臨床試験が行われている。FEATHER研究はCKDステージG3の日本人患者を対象とした大規模な二重盲検RCTであるが、フェブキソスタットによる腎機能低下抑制効果は証明できなかった[33]。
- 処方例:CKD患者の高尿酸血症の治療例
- 高尿酸血症を認める場合は、以下のいずれかにて治療を開始する。
- 1) フェブリク錠 10mg 1日1回10mgより開始し徐々に増量、40mgを維持量とする [㊜高尿酸血症]
- 2) トピロリック錠20mg 1回20mg 1日2回より開始し、1回60mg 1日2回の維持量へ徐々に増量する [㊜高尿酸血症]
- 治療の詳細は高尿酸血症の項を参考にしてほしい。
代謝性アシドーシス:
- 重炭酸濃度が低い群は高い群に比べて末期慢性腎不全に至る危険性が高く、CKDステージG3以降の患者で重炭酸濃度が21 mEq/Lに低下した場合には重曹の投与を行い、24 mEq/L前後を目標に調節することで腎機能悪化の抑制が期待できる[34][35]。
- 重曹投与量が増えるに従い、体液貯留、浮腫発症の危険性高く、体重変化など経過観察には注意が必要である。
- 処方例:代謝性アシドーシスの治療例
糖尿病:
- 糖尿病を認める場合は、HbA1c7.0%未満を目標に血糖コントロールを行う。ただし、血糖管理は早期腎症から顕性腎症への進行は抑制するが、顕性腎症以降の進行抑制に関するエビデンスは不十分であり、個々の患者の状況に合わせ個別に管理目標を設定する[1]。
- SGLT2阻害薬は腎機能低下の進展抑制およびCVDイベント発症(心不全)と死亡の発生抑制が、期待できる。
貧血の治療:
- Hb 10~13 g/dLを目標とし、赤血球造血刺激因子製剤(erythropoiesis stimulating agent、ESA)やHIF-PH阻害薬を投与する。治療薬の選択やHb値目標については個々の症例のQOLや背景因子、病態に応じて判断する[1]。
- HIF-PH阻害薬としての使用にあたっては日本腎臓学会より公表された、「HIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendation(2020年9月29日版)」に従い使用することが勧められる。
- 十分な鉄補充の後 HIF-PH阻害薬を用いて管理する。
- 事前に悪性腫瘍、網膜病変の検査を行い、合併がないか、適切な治療がなされているかを確認したうえで開始する。
- 多発性囊胞腎患者にHIF-PH阻害薬を投与する場合は、嚢胞増大を促進する可能性があり、投与中は少なくとも年に1回は画像検査による経過観察を行うこと
- ESAとHIF-PH阻害薬の併用は想定されておらず、行うべきではない。
- 処方例:CKD患者の貧血の治療例
- Hb 10~13 g/dLを目標としESAかHIF-PH阻害薬いずれかを投与する。TSAT≦20%またはフェリチン<100 ng/mLを認める場合は、フェロミアまたはフェロ・グラデュメットを併用する。
- 1) ネスプ注射液10μgプラシリンジ 30~120μg 皮下注 2~4週に1回 [㊜腎性貧血]
- 2) ミルセラ注シリンジ25μg 25~250μg 皮下注 4週に1回 [㊜腎性貧血]
- 3) バフセオ錠300mg 1錠 分1 [㊜腎性貧血]
- 4) ダーブロック錠2mg 1~2錠 分1 [㊜腎性貧血]
- 5) フェロミア錠50mg 1~4錠 分1~2 食後 次回外来まで [㊜鉄欠乏性貧血]
- 6) フェロ・グラデュメット錠105mg 1~2錠 分1~2 食間 次回外来まで [㊜鉄欠乏性貧血]
- 治療の詳細は腎性貧血の項を参考にしてほしい。
- 保存期慢性腎臓病で、複数回の検査でHb値10 g/dL未満となった患者には、赤血球造血刺激因子製剤(erythropoiesis stimulating agent、ESA)やHIF-PH阻害薬の投与が推奨される(推奨度2)。
- 2型糖尿病性腎症の進行をARBであるロサルタンが抑制したことを示したRENAAL研究(Reduction of Endpoints in Non-insulin-dependent diabetes mellitus with Angiotensin II Antagonist Losartan)のMohanramらのサブ解析がある。これによると、末期腎不全の発症頻度は貧血が進行するほど上昇することが示されている。また一般住民(米国)においてはCKDや心不全は生命予後悪化因子であるが、それに貧血が合併すると、さらに生命予後が悪化するということも示されている(O)[36]。したがって、貧血はCKDのみならず生命予後にとっても悪化要因である。
- 貧血のESA投与による過度の改善は生命予後の悪化をもたらす可能性があるので、Hb 12 g/dLを超えた場合ESAまたはHIF-PH阻害薬を減量、あるいは休薬を考慮する。また、意図的にHb 13 g/dL以上にしてはならない(推奨度2)。
- Druekeらは、CKD患者を「目標Hb 12~15 g/dLにする群」と「目標Hb 10.5~11.5 g/dLにする群」の2群に無作為に割り付け、ESAによる加療を行った。その結果、左室重量、腎機能、心血管疾患発症に関して両群に差はみられなかったが、Hb高値群のほうがQOLは高かった(R)[37]。また、Singhらは目標Hbを「13.5 g/dL」と「11.3 g/dL」の2群に割り付けた。その結果、複合エンドポイント(死亡、心筋梗塞、心不全による入院、脳卒中)に達する率は、明らかにHb高値群で高かった(R)[38]。これらの臨床研究から、CKDでは、Hbを正常化することは必ずしも生命予後にとってよい結果をもたらさないことが明らかになった。わが国ではESAの投与による、PREDICT研究[39]として、目標Hb 11-13 g/dLと9-11 g/dLの2群に割り付けた前向き介入研究とRADICANC-CKD研究[40]として、Hb 11 g/dL以上を目指す群とエントリー時のHbを維持する前向き介入研究の結果が報告され、いずれも高いHb群での腎予後、心臓血管イベントに差がなかった。そこで、現在のガイドラインの目標Hb値が設定された。
- 貧血を有するCKDにおいて鉄欠乏が認められれば鉄剤を投与することが推奨される(推奨度2)。
- これに関しては明確なエビデンスは出されていないが、臨床的な経験からのエキスパートオピニオンである。
浮腫への対応:
- チアジド系利尿薬を用いて降圧および浮腫の軽減を期待することができる。
- GFR<30 mL/分ではループ利尿薬がより有効である。ただし、降圧のためにはダイアートのような長時間作用型のループ利尿薬が有利である。
- 浮腫の改善の効果に関しては通常、チアジド系利尿薬よりもループ利尿薬のほうが優れる。
- 軽度の浮腫なら必ずしも治療の必要はない。利尿薬による浮腫の治療では、腎機能の低下に注意する必要がある。
- GFRの値を参照に、チアジド系利尿薬としてフルイトランとナトリックスのいずれかを、ループ利尿薬としてラシックス、ダイアートのいずれかを用いる。浮腫に対してはループ利尿薬のほうが効果が強い。
- 処方例:CKD患者で浮腫を認める場合の治療例
- 1) フルイトラン錠 1mg 1錠 分1 朝食後 [㊜高血圧症]
- 2) ナトリックス錠 1mg 1錠 分1 [㊜高血圧症]
- 3) ラシックス錠 20mg 0.5~4錠 分1~2 朝(昼)食後 次回外来まで [㊜腎性浮腫]
- 4) ダイアート錠 30mg 1~2錠 分1 朝 [㊜腎性浮腫]
腎毒性物質曝露への対応:
- NSAIDsや腎障害の原因となる可能性のある薬剤やサプリメントは極力、中止するか減量する。
- 禁煙指導を行う。
- 喫煙は CKD の発症および進行に関連する独立した危険因子であり、CVD の発症リスクを増加させることから、CKD 患者に禁煙指導を行うことは強く勧められる(推奨度1)。
- CKDと喫煙の関係については次のような観察研究がある。Yamagataらは、日本人12万人の10年間の健診データからCKD発症の予測因子を解析し、喫煙はCKD発症の予測因子であるが、過去の喫煙は有意ではないことを示した(O)[21]。またStengelらは米国人9,000人の12~16年間の追跡データから、1日20本以上の喫煙は透析導入もしくはCKD関連死亡のリスクと関連することを示した(O)[41]。したがって、CKD患者には禁煙指導を行うことが勧められる。
尿毒症の治療:
- 処方例:CKD患者の尿毒症の治療例
- 中程度以上の腎障害を持つCKD患者には、球形吸着炭の投与を考慮してもよい(推奨度2)。
- 球形吸着炭が腎不全による倦怠感の改善に効果があることを示したRCTが存在する。SchulmanはCr 3.0~6.0 mg/dLでインドキシル硫酸濃度が0.50 mg/dL以上の164人を、さまざまな量の球形吸着炭を投与する群に無作為に割り振った。その結果、投与量が多いほどインドキシル硫酸濃度が減少し、倦怠感などの症状の改善がみられた(R)[43]。このことより、中程度以上の腎障害を持ち倦怠感を訴える患者には、球形吸着炭6 g/日を3回に分けて投与することを考慮してもよい。なお、この研究では1日9 gまでは効果が増えることが認められている。しかし、日本では6 gまでが保険用量である。また血清Cr≦5 mg/dLの患者に投与して、GFRの低下速度が抑制されたとの報告もある(CAP-KD)[44]。
電解質異常の治療:
- 血清K値の管理目標:≧4.0 mEq/L、<5.5 mEq/Lの管理によって、総死亡・心血管疾患のリスクが低下する[1]。
- 緊急の高カリウム血症に対してRASiを一時的に中止することは有効な治療戦略であるが、有害事象が収束した後は治療を再開することが望まれる。
- CKDステージG4期から血液検査に静脈血ガス分析を加え、HCO3-<21 mEq/Lの代謝性アシドーシスを認める場合は、炭酸水素ナトリウム(重曹)を投与する(1日当り1.5gから開始する)。HCO3-濃度は基準値24 mEq/L前後を目標として維持する[1]。代謝性アシドーシスの補正で腎保護効果が認められるとの報告がある[34][35]。
- カルシウム、リン、PTHに異常を認める場合は、慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常と診断し、適宜治療を行う。治療方法の詳細は慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常を参照にしてほしい。
- 処方例:CKD患者の電解質異常の治療例
- 緊急対応の必要ない高カリウム血症を認める場合は1)-3)のいずれかを、アシドーシスを認める場合は4)を考慮する。
- 2) ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリー20%分包25g「三和」 3~6個 分3 [㊜腎不全に伴う高カリウム血症]
- 3) ロケルマ懸濁用散分包5g 初回30g 分3 2日間、以降5g分1で継続 [㊜高カリウム血症]
食事療法:
- 適切なエネルギー量の維持、食塩制限(3 g/日以上、6 g/日未満)、たんぱく質調整(GFR 45~59(CKDステージG3a)では0.8~1.0 g/kgBW/日、GFR 45未満(CKDステージG3b以降)では0.6~0.8 g/kgBW/日)。食事内容が適切かどうかをみるには、体重の推移と管理栄養士による食事管理が必要である。可能ならば、24時間蓄尿で1日の食塩摂取量とたんぱく質摂取量を計算する。常に患者にフィードバックし、より適切な摂取量に近づける努力をする。
- 高齢者にとってはたんぱく質0.8~1.0 g/kgBW/日の摂取は日本人の食事摂取基準ではたんぱく質の推奨摂取量に相当する。たんぱく質摂取量については個々の患者の身体状況、栄養状態、身体機能、精神状態、生活状態を総合的に勘案し、一律にたんぱく質制限を行うことは勧められない。
- 「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」(日本腎臓学会)、日本腎臓学会編「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」、日本医療研究開発機構編「CKDステージG3b~5診療ガイドライン2017」参照
- CKD患者における適度な飲酒量についての推奨は困難である。エビデンスが充分でないためアルコールの推奨量は定められない。ただし、日本では適度な飲酒はアルコールにして20 g(日本酒にして1合程度)とされている。
- ステージG3~5のCKD 患者では、腎機能障害の進行抑制、予後改善のため、病態に応じたたんぱく質摂取量の調整を行う必要がある。「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」および「サルコペニア・フレイルを合併した保存期CKDの食事療法の提言」では、尿蛋白を減少させる目的か腎機能低下を抑制する目的で、0.6~0.8 g/kg/日をたんぱく質制限の目安としているものの、CKD患者の年令、生活習慣、BMIおよびその変動を参考に、たんぱく質制限の優先、緩和を検討すべきである(推奨度2)。
- CKDにおける低たんぱく質食の効果についてはさまざまな考え方がある。Fouqueらのレビューでは、CKDを対象とした8件のRCT(1,524例、低たんぱく質食群763例、コントロール食群761例)を解析し、低たんぱく質食群はコントロール食群に比して腎疾患死の相対危険度が0.69(95%CI 0.56~0.86、p=0.0007)、NNT2~56例と報告している(CS)[48]。低たんぱく質食群のたんぱく質摂取は0.2~0.7 g/kg/日であった。「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」では、尿蛋白を減少させる目的か腎機能低下を抑制する目的で、G3aで0.8~1.0 g/kg/日、G3b以降0.6~0.8 g/kg/日をたんぱく質制限の目安としている。これは、食事療法を集学的治療の1つと位置づけ、厳しい低たんぱく質食を患者に強いるより、他の治療(生活習慣改善、レニン-アンジオテンシン系抑制薬、脂質異常症治療薬、糖尿病治療薬など)と組み合わせて適正な低たんぱく質食を勧めるべきという判断である。もちろん、経験があり、患者教育を十分に行える施設では厳重な低たんぱく質食も可能である。その場合、蛋白の異化亢進を防ぐため十分なエネルギー摂取をし、必須アミノ酸欠乏を防ぐためサプリメントなどを用いるなどの配慮が必要である。サルコペニア、フレイルの合併がある高齢CKD患者が増加しており、適切な運動、日常活動の維持を考慮し、過度なたんぱく質制限にならないように注意が必須である。
- 蛋白摂取量の制限については、腎機能の改善ではなく腸管からのクレアチニン負荷減少の可能性が否定できず、腎機能の評価にシスタチンCによるeGFRで評価を行う。
- 食塩摂取は血圧を上昇させ、尿蛋白を増加させることがわかっている。したがって、CKD進行抑制のため、1日6 g未満(3 g以上)の食塩量が推奨される(推奨度1)。
- 食塩摂取量と血圧との相関性をみた、いくつかの研究がある。SacksらのRCTでは、ナトリウム摂取量を150 mmol/日、100 mmol/日、50 mmol/日と、30日ごとに減らした(それぞれ食塩9 g/日、6 g/日、3 g/日に相当)。この結果、血圧は食塩摂取量に応じて下がった(R)[49]。また、ButerらはACE阻害薬投与下で尿蛋白量が1 g/日以上のCKD患者において、低食塩食(3 g/日)と高食塩食(15 g/日)を4週間ずつ行い、尿蛋白量の変化をみた。結果は、低食塩食時には尿蛋白は3.1 g/日、平均血圧は89 mmHg、高食塩食時には尿蛋白は4.5 g/日、平均血圧は98 mmHgであった(R)[50]。これらの研究から、食塩摂取は血圧を上昇させ、尿蛋白を増加させることがわかる。尿蛋白は腎疾患の症状であるが、腎疾患そのものを悪化させることがわかっている。したがって、CKDでは食塩摂取量を制限すべきである。
飲水:
- CKDのG1、G2期では、水分負荷は腎機能保持に有効であるため積極的に飲水を促す[51]。一方、CKD G3期以降では、水分負荷が生命予後、腎予後に有益性が認められないことから、通常よりも意図的に飲水量を増やすことは行うべきではない[52]。
生活・運動:
- 日中の座位時間を減らし、中等度の運動負荷を増加させることで、運動能力の向上のみでなく、腎機能悪化スピードの改善も期待できる。
ワクチン:
- 処方例:CKD患者のワクチンの投与例
- 1) インフルエンザHAワクチン「生研」 1回 0.5mL 皮下注
- 2) ニューモバックスNPシリンジ 1回 0.5mL 皮下注または筋注
腎代替療法:
- CKDG4期に至った時点で、腎代替療法(透析療法や腎移植)に関する情報提供を行う。
- 透析の導入: >詳細情報
- 腎移植: >詳細情報
CKD ステージによる食事療法基準:[56]
- ポイント:
- 慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版では、以下の表の用量を患者の状態、合併症により適宜調整して用いることを推奨している。
専門医相談のタイミング
- 治療の初期の段階で、専門医に紹介すべきかどうかを判断する。特に下記のいずれかを認める場合は、腎臓専門医の意見を聞くことが望ましい。また、初期の段階で専門医に紹介しないと判断した場合でも、尿蛋白(尿アルブミン)とGFRを常にモニターしながら、必要に応じて専門医に紹介する。
- ただし、実臨床においては、地域の事情に加え、患者の年齢、他の合併症の程度、さらに経時的な腎機能や蛋白尿の変化などを考慮し、適切な対応が求められる。
- 上記以外に、KDIGO2012CKDガイドラインでは 以下を腎専門医へ紹介すべき基準としている。
- 48時間内での血清クレアチニン0.3 mg/dL以上の上昇
- 1週間以内の血清クレアチニン1.5倍の上昇
- 6カ月以内のeGFR50%以上の低下
- eGFR30 mL/分/1.73 m2が3カ月間隔で2回確認
- 通常のeGFRより25%以上低下した場合
- 年間5 mL/分/1.73 m2以上低下する場合
- 年齢にかかわらず健診受診者のeGFR<45の場合は専門医への紹介を考慮する[63]。
- ほかに以下の場合も専門医への紹介が望ましい。
- 尿沈渣にて糸球体由来の赤血球を認める
- 原因不明の腎不全
- 透析の適応患者
- 腎生検の適応患者( >詳細情報 )
腎代替療法の導入
腎移植
腎移植:
- 腎臓移植とは、提供された腎臓を移植する治療法で、末期の腎臓病の唯一の根本的治療法である。
- 腎臓移植を行うことで、透析治療から解放され、食事の制限も緩和される。また、女性では妊娠・出産も可能になる。一方、生涯にわたる免疫抑制薬の服用が必要となる。
- 手術後の生着率は生体腎移植で1年98.7%、5年94.1%、献腎で1年96.4%、5年87.9%である[67]。
透析導入前の腎移植(先行的腎移植):
- 透析導入前に腎移植を行うことは、透析を経てからの腎移植に比べ、移植腎生着率および患者生存率が良好であり[68][69][70][71][72][73]、可能ならば、透析前に腎移植を導入することが望ましい。
- 先行的腎移植は我が国の全腎移植の25%を超えて年々その比率が上昇している。
腎ドナー: