家庭医療と痛みの診察室

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腎結石に対する痛みにマグネシウム注射がモルヒネと同等に効く(無作為化比較試験)

疝痛の緩和における硫酸マグネシウムと硫酸モルヒネの静脈内投与。無作為化臨床試験

Zolfaghari Sadrabad A, Azimi Abarghouei S, Farahmand Rad R, Salimi Y. Intravenous magnesium sulfate vs. morphine sulfate in relieving renal colic: A randomized clinical trial. Am J Emerg Med. 2020 Jul 21:S0735-6757(20)30629-X. doi: 10.1016/j.ajem.2020.07.035. Epub ahead of print. PMID: 33071088.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

目的

 腎結石から発生する腎疝痛は、事実上、経験する最も激しい痛みである。この疾患の通常の治療法として硫酸モルヒネの点滴が知られている。本研究では、硫酸マグネシウムモルヒネ硫酸塩を用いた場合の鎮痛効果と硫酸モルヒネ硫酸塩の副作用の有無を比較することを目的とした。

方法

 イラン・ヤズドのShahid Sadoughi病院救急部に紹介された腎疝痛患者を対象とした二重盲検無作為化臨床試験を実施した。症例群には硫酸マグネシウム 50 mg/kg を静注、対照群にはモルヒネ 0.1 mg/kg を静注した。主要アウトカムは,注入後0,10,20分後の疼痛スコアを数値評価尺度で測定した.データはSPSS16を用いて解析した。

結果

 両群は、紹介時の人口統計学的特徴と痛みの強さが類似していた(P <.0001)。投与10分後の疼痛平均点はモルヒネ群で4.88,マグネシウム群で5.70となり,モルヒネ群の方が大きいことが判明した(P-=0.06)。しかし,疼痛平均スコアはモルヒネ群で3.65,マグネシウム群で3.20となり,有意な差はなかった(P = 0.48)。

結論

 本研究では,硫酸マグネシウム50mg/kgを静脈内投与することで,更なる合併症なしにモルヒネと同等の腎疝痛軽減効果が得られると結論づけた。

 

所感

 腎結石に対して硫酸マグネシウムを用いること自体を知りませんでした。合併症も少なくモルヒネと同等の効果があるようなら使ってみたい気もします。

 ちなみに尿管結石に対してボルタレン坐薬をよく使いますが、芍薬甘草湯も併用すると効果が高くなる印象です。