家庭医療と痛みの診察室

家庭医療と痛みの治療を中心に、調べたことや感じたことをアップしていきます。

高尿酸血症について

概要・推奨  

高尿酸血症では、他の心血管疾患の危険因子のサーベイが強く推奨される(推奨度1)。

高尿酸血症痛風の最大の危険因子であり、尿酸値が高いほど痛風発作の危険が高まる(推奨度2)。

高尿酸血症は尿路結石のリスクであり、高尿酸血症患者においては尿路結石の既往歴を聞くことや、尿路結石の患者では尿酸をチェックすることが推奨される(推奨度2)。

高尿酸血症は腎障害のリスクであり、腎機能のフォローが推奨される(推奨度1)。

初診時には二次性高尿酸血症の除外が推奨される(推奨度1)。

高尿酸血症の患者には、食事療法が奨められる(推奨度2)。

初発の痛風発作の患者に対して、再発予防のために尿酸値を下げることが推奨される。

高尿酸血症治療薬を開始するときに、痛風の発作を予防するためにコルヒチンを投与してもよい。

高尿酸血症の診断治療の流れ

高尿酸血症の診断治療の流れ

病態・疫学・診察

疾患情報(疫学・病態)

男女とも血清尿酸値が7mg/dLを高尿酸血症と定義する。

成人男性では20%以上が高尿酸血症の基準に当てはまる。それに対し、女性では5%未満である。

無症状で発見される高尿酸血症は、まず二次性の高尿酸血症の除外が必要である。

二次性の高尿酸血症、悪性腫瘍の合併や化学療法中の患者では、急性尿酸性腎症および腫瘍融解症候群の緊急の治療を要する場合があることに留意する。

高尿酸血症では痛風関節炎や尿路結石の予防が重要で、患者から訴えがなくても、関節炎の既往、尿路結石の既往やそれを疑わせるような腹痛発作の既往、健診や偶然見つかった尿検査の異常や腎機能障害について、病歴聴取する。

さらには心血管疾患、腎障害などの合併症の予防が重要で、その患者のベースラインのリスク評価が重要である。

問診・診察のポイント

痛風関節炎、尿路結石を疑うエピソードが過去にないかどうか、詳細な病歴聴取が必要である。

二次性の高尿酸血症の除外のため、システムレビューを行う。

薬剤の服用歴について聴取する。

心血管疾患の危険因子評価のため、身長、体重、BMI、血圧、脈拍の測定、喫煙、飲酒、心血管疾患の家族歴を確認し、脂質、血糖、腎機能検査、尿蛋白をオーダーする。

 

心血管疾患の危険因子との関連、独立した危険因子かどうか:高尿酸血症では、他の心血管疾患の危険因子のサーベイが強く推奨される(推奨度1)。

背景:高尿酸血症は心血管疾患のリスク、総死亡との関連があることを示した日本人を対象としたコホートスタディが複数存在する。

研究事例の説明:その1つである、2005年のTomitaらのスタディでは、尿酸値が8.5mg/dLであることは尿酸値が5.0~6.4mg/dLの人と比較して、全死亡のrelative riskが1.6倍、心血管病のrelative riskが1.5倍になった(O)[1]。

結論:このことにより、高尿酸血症では、他の心血管疾患の危険因子のサーベイが強く推奨される。なお、高尿酸血症自体が独立した危険因子かどうかについては意見が分かれているが、2010年に報告されたコホート研究のメタ分析では、冠動脈疾患については、多変量解析後で女性のみで有意な差が検出され、脳卒中に関しては多変量解析後も男女とも有意な危険因子と報告されている(M)[2]。

 

痛風のリスク:高尿酸血症痛風の最大の危険因子であり、尿酸値が高いほど痛風発作の危険が高まる。

研究事例の説明:高尿酸血症痛風の最大の危険因子であることを示した観察研究が存在する。1987年のCampionらの研究では、2,046人の男性の患者を観察した結果、6.0mg/dL未満では、痛風関節炎の5年間累積発症率は0.5%、6.0~6.9mg/dLで0.6%、7.0~7.9mg/dLで2.0%、8.0~8.9mg/dLで4.1%、9.0~9.9mg/dLで19.8%、10.0mg/dL以上では30.5%と報告されている(O)[3]。

結論:これらのことより、高尿酸血症痛風の最大の危険因子であり、痛風発作の危険が高まる。

 

尿路結石のリスク:高尿酸血症は尿路結石のリスクであり、高尿酸血症患者においては尿路結石の既往歴を聞くことや、尿路結石の患者では尿酸をチェックすることが推奨される(推奨度2)。

研究事例の説明:高尿酸血症は尿路結石のリスクであることを示した観察研究が複数存在する。その1つであるHall らの研究では、尿酸排泄が1,100㎎以上の人で尿路結石の罹患が50%近いと報告している(O)[4]。また2008年のYasuiらの研究では、2004年から2008年にかけて日本の1,214の病院にて、尿路結石の原因を確認したところ、その4~5%にて尿酸結石を認めている(O)[5]。

結論:これらのことより、高尿酸血症は尿路結石のリスクであり、高尿酸血症患者においては尿路結石の既往歴を聞くことや、尿路結石の患者では尿酸をチェックすることが推奨される。

 

腎障害のリスク:高尿酸血症は腎障害のリスクであり、腎機能のフォローが推奨される(推奨度1)。

研究事例の説明:高尿酸血症が末期腎不全や血液人工透析のリスクであるかどうかを検討した沖縄の観察研究がある。この研究では、男性では高尿酸血症の腎不全に対する相対危険は、男性で2.004 (0.904-4.444)、女性で 5.770 (2.309-14.421)と、女性ではっきりした危険因子であることを報告している(O)[6]。海外の研究を含む総説論文でも同様の結果である(O)[7]。

結論:したがって、高尿酸血症は腎障害のリスクであり、腎機能のフォローが推奨される。

診断方針

想起

以下のような症状を訴えた患者では、痛風を疑う必要がある。

無症候性高尿酸血症:健診、「血液検査で異常がありました」「尿酸値が高いといわれました」

痛風発作:関節が痛い、腫れた、歩けない、靴が履けない、痛風だと思う

尿路結石:おなかが痛い、赤い尿が出る

診断

男女とも血清尿酸値が7mg/dLを高尿酸血症と定義する。

診断には2次性の高尿酸血症の除外を行う。

 

初診時には二次性高尿酸血症の除外が推奨される(推奨度1)。

日本のガイドラインの記載によると、5%は二次性の尿酸上昇で、基礎疾患の検索が重要である(J)[8]。

治療方針

二次性の疾患の評価

ポイント:

下記のような疾患が、二次性の高尿酸血症の原因と考えられている。

初診時には、以下の評価を行い、二次性高尿酸血症を除外することが推奨される。

体重減少の有無

システムレビューの実施

バイタルサイン、脱水の評価

内服薬、健康食品のチェック

便秘、皮膚の乾燥、声がれ、むくみ、寒がりなどのチェック

赤色尿のチェック

皮疹、リンパ節腫大のチェック

血算、腎機能の検査

 

頻度の高い疾患:

薬剤性:頻度が高いため常に原因として考慮する。診断のためには、服薬歴を詳細に聴取する。お薬手帳をチェックする。

ワーファリン

サイアザイド、ループ系利尿薬

抗がん剤

シクロスポリン、タクロリムス

低用量サリチル酸

エタンブトール

ピラジナミド

レボドーパ

脱水:頻度が高いため常に原因と評価し、過去の検査時の状況、バイタルサインを評価する。

腎不全:頻度が高いため常に原因として考慮する。診断のためには、尿検査、血液検査(尿酸、BUN/Cre、電解質)をする。

悪性腫瘍:体重減少を認める症例、異常高値を認める場合には想起する。診断のためには、システムレビューを行い、必要ならばがんに特異的な検査を行う。

甲状腺機能低下症:頻度が高いため常に原因として考慮する。診断のためには病歴、診察、TSHの測定を行う。

 

重篤な疾患:

腫瘍融解症候群:腫瘍融解症候群では高尿酸血症と同時に急性腎不全を来すことがあるため重篤化することがある。悪性腫瘍で治療中でないかどうかを確認する。

横紋筋融解症:四肢や筋肉の痛みがないかどうか、赤色尿がないかどうか、疑わしい薬物(スタチンなど)の投与を受けていないかどうかを確認する。

 

まれな治療可能疾患:

溶血性貧血・二次性多血症:血算にて評価を行う。

尋常性乾癬:皮疹の有無を確認し、乾癬の有無を評価する。

治療

ポイント:

高尿酸血症は、痛風や尿路結石を合併しない限り無症状で、治療がただちに必要になることはない。

痛風発作の反復、痛風結節、クレアチニンの上昇があれば治療を開始する。

コルヒチンを、アロプリノールの開始時に投与をすると、治療開始時の痛風発作が予防できるとのエビデンスがある。

 

高尿酸血症の診断治療の流れ

画像

出典

 

著者提供

 

治療適応:

日本のガイドラインでは、「無症状でも血清尿酸値が9mg/dLを超えれば治療を開始する」とあるが、高尿酸血症は、痛風や尿路結石を合併しない限り無症状で、治療がただちに必要になることはない。まれだが高尿酸血症治療薬に副作用があることより、無症状では薬物治療を始めないという対応も選択肢の1つである。

痛風発作の反復、痛風結節があれば治療を開始する。痛風発作を繰り返すとき、痛風結節を認めるとき尿酸の目標値は、6.0mg/dL以下の維持を目指す。

悪性腫瘍の化学療法中の高尿酸血症の際には、腫瘍の崩壊により急激な尿酸の増加が尿細管、集合管の閉塞を来し、急性腎不全を引き起こすことがあり注意が必要である。この場合、急性腎性腎不全の治療が必要となる。尿量の確保、尿のアルカリ化、場合によっては血液透析や尿酸分解酵素薬の投与が必要である。

 

病型の評価:

高尿酸血症は、尿酸排泄低下型、腎負荷型(尿酸産生過剰型、腎外排泄低下型)、混合型に大別される。

尿酸排泄量が0.51mg/kg/時以上である場合には、尿酸産生過剰型と判断する。

尿酸クリアランスが7.3mL/分未満である場合には、尿酸排泄低下型と判断する。

ただし、病型分類を行うための試験は煩雑であり、実臨床では実施は難しい。

 

薬剤選択:

確実に薬物治療の適応となるのは、痛風発作を繰り返すとき、痛風結節を認めたとき、クレアチニンが上昇したときに限るというのが、日本のガイドラインとは異なる考え方としてある。

尿酸排泄低下型の高尿酸血症では尿酸排泄剤を、尿酸生成過剰型では産生抑制薬を第1選択とする考え方もあるが、排泄薬を使用する際には尿のアルカリ化が必要で痛風結節、尿路結石、腎障害がある場合には禁忌である。それに対し産生抑制薬は適応が広く、排泄低下型にも使用できるため、産生抑制薬を第1選択にするとよいと考えている。

また、高血圧を合併しているときは、ニューロタンも尿酸を低下する効果を認めているため、選択肢の1つである。

なお、急性の痛風発作が落ち着くまで、予防治療は開始すべきでなく、落ち着き次第治療を開始する。ただし、発作時から予防治療を開始しても発作の遅延はないとする小規模のRCTが1つある[9]。痛風発作を繰り返すとき、クレアチニンが上昇したときの尿酸の目標値は、6.8mg/dL未満、痛風結節がある場合には5mg/dL未満を目指す。

初期治療として、1)を第1選択とする。腎機能低下時、効果が十分でないときに、2)3)を考慮する。それでも効果不十分のときは4)~6)の追加を考慮するが、その際、7)または8)を投与する。治療開始時に9)を併用してもよい。少量投与から始め、尿酸値6.0mg/dL以下の維持を目指す。高血圧を合併していれば、10)は選択肢の1つである。

処方例:高尿酸血症の初期治療例

1) ザイロリック錠100 1~3錠 分1~3 [㊜高尿酸血症]

2) フェブリク錠10mg 10~40mg 分1 [㊜高尿酸血症、がん化学療法に伴う高尿酸血症]

3) トピロリック錠20mg/ウリアデック錠20mg 40mg~120mg 分2 [㊜痛風高尿酸血症]

4) ユリノーム錠25mg 25~100mg 分1~2 [㊜高尿酸血症(厳密には「高尿酸血症を伴う高血圧症」)]

5) ベネシッド錠250mg 2~8錠 分2~4 [㊜痛風]

6) ユリス錠0.5mg 0.5mg-4mg 分1[㊜痛風高尿酸血症]

7) ウラリット-U配合散 3g 分3を目安に尿pH6-7を目標 [㊜高尿酸血症]

8) ウラリット配合錠 6錠 分3を目安に尿pH6-7を目標 [㊜高尿酸血症]

9) コルヒチン錠0.5mg 2~3錠 分2~3 [㊜痛風]

10) ニューロタン錠100mg 25~50mg 分1 最大100mg [㊜高血圧症]

 

急性尿酸性腎症:

悪性腫瘍の化学療法中の高尿酸血症の際には、腫瘍の崩壊により急激な尿酸の増加が尿細管、集合管の閉塞を来し、急性腎不全を引き起こすことがあり注意が必要である。この場合、急性腎性腎不全の治療が必要となる。尿量の確保、尿のアルカリ化をおこなう。また、場合によっては血液透析やラスブリカーゼ(ラスリテック)などの尿酸分解酵素薬の投与が必要である。

 

他の心血管疾患の危険因子の評価・治療:

高尿酸血症では、他の心血管疾患の危険因子のサーベイを行い、必要に応じて、食事指導、禁煙指導、脂質異常症や糖尿病の治療を行うことを考慮する。

心血管疾患の家族歴を聴取する。

喫煙歴、飲酒歴を聴取する。

BMI、血圧測定を行う。

血清脂質、血糖測定を行う。

 

高尿酸血症の患者には、食事療法が奨められる(推奨度2)。

研究事例の説明:食事と痛風の関連を検討した53の観察研究をまとめたメタ分析が1件検索された。これによると、アルコール摂取は痛風発作の危険因子で、種別ではビール、ウィスキーが危険因子であったが、ワインは危険因子ではなかった。また、肉の摂取、シーフード摂取、糖分の入った飲み物も痛風発作の危険因子であった。乳製品、コーヒー、葉酸の摂取が多いと、痛風発作が少ないことを報告していた(O)[10]。なお、食事療法に関して痛風発作をアウトカムにした介入研究は検索されなかった。

 

無症候性高尿酸血症に薬物治療を行うかどうかは議論が分かれるところである。痛風や腎障害、心血管疾患をアウトカムとしたランダム化比較試験は検索されなかった。日本のガイドラインでは、合併症のない場合でも9mg/dL以上で薬物治療を考慮するとなっている。

無症候性高尿酸血症の薬物治療を検討した痛風発作、腎障害などの真のアウトカムを評価した介入研究は検索されなかった。

腎機能をアウトカムした1つのRCTが存在し、アロプリノールの投与で腎機能が改善した、もしくは腎機能悪化の速度が緩徐になったと報告している(R)[11]。

また、日本のガイドラインでは、痛風発作があれば薬物治療の適用、痛風発作がなくても、腎障害、尿路結石、高血圧、糖尿病、虚血性心疾患、メタボリックシンドロームなどの合併症があれば、8mg/dL以上で、ない場合でも9mg/dL以上で薬物治療を考慮するとなっている(J)[8]。

 

初発の痛風発作の患者に対して、再発予防のために尿酸値を下げることは推奨される。そのために、高尿酸血症治療薬の使用は、患者が希望すれば行ってもよい。

研究事例の説明:痛風の再発と、尿酸値との関係をみた観察研究が1つ存在する。Shojiらの研究では、267人の初発痛風患者をフォローした結果、尿酸値が高いほど再発のリスクが高かった。また、高尿酸血症治療薬にて治療をされた232人中の69人(29.7%)、治療をされなかった 35人中22人(62.9%)に再発が認められた。このことより、初発の痛風発作に対して、再発予防のために尿酸値を下げることは推奨される[12]。なお、yamanakaらの研究によると、望ましいレンジは4.6~6.6 mg/dLであるとされ、その値に間にあるときは、再発のリスクが0.705 (95% confidence interval, 0.629-0.791)になるとされている[13]。

 

高尿酸血症治療薬を開始するときに、コルヒチンを投与して痛風の発作を予防することは推奨される。

研究事例の説明:コルヒチンにより、高尿酸血症治療薬の開始時の痛風発作を防ぐことができることを示したRCTが存在する。Borstadらの2004年の研究では、43人を無作為に治療群、未治療群に割り振った結果、治療群では、6カ月にわたり痛風発作が少なかった(0~3カ月 0.57 vs 1.91発作、3~6カ月 0 vs 1.05発作)[14]。これらのことより、高尿酸血症治療薬を開始するときに、コルヒチンを投与して痛風の発作を予防することは推奨される。

なお、NSAIDにも同様の予防効果が認められることが知られており[15]、コルヒチンが使いにくい患者では使用することが奨められる。

尿酸生成抑制薬

ポイント(薬理・病態):

尿酸生成抑制薬は、尿酸を作り出すことに関わっているキサンチンオキシダーゼの活性を抑制させ尿酸の産生は低下する。

尿酸生成抑制薬に属する薬剤として、アロプリノール(ザイロリック)、フェブキソスタット(フェブリク)、トピロキソスタット(ウリアデック・トピロリック)などが知られている。

 

同種・同効薬の特徴:

尿路結石を生じやすい人に向いている。

 

使用上の注意:

服用をはじめて6カ月間は定期的に血算、肝機能検査を行う。

服用中は水分を多く摂取する。

飲みはじめに痛風発作が生じやすくなることがある。急性期は内服を開始しない。

 

主要な同種同効薬内での薬剤選択のポイント:

アロプリノール(ザイロリック)は、腎機能によって投与量を調節する必要がある。フェブキソスタット(フェブリク)、トピロキソスタット(ウリアデック・トピロリック)は投与量を調節する必要はなく、腎機能障害がある場合にはこちらを優先する。

キサンチンオキシダーゼとの結合方法はアロプリノールが最も強いが、フェブキソスタットは、結合の仕方が多岐にわたっているためアロプリノールで効果不十分のケースで使用が勧められる。

トピロキソスタットに、慢性腎臓病や心血管疾患の発症予測因子である尿中アルブミンを低下させる作用が示されている。

 

投与方法:

1日1回:フェブキソスタット(フェブリク)

1日2回:トピロキソスタット(ウリアデック・トピロリック)

1日2-3回:アロプリノール(ザイロリック

 

主な保険適用:

痛風高尿酸血症を伴う高血圧症:ザイロリック

痛風及び高尿酸血症:フェブリク、ウリアデック・トピロリック

尿酸排泄促進薬

ポイント(薬理・病態):

尿酸排泄促進薬は、腎の尿細管での尿酸の再吸収を抑えて尿からの尿酸排泄を促進する作用を持つ。

尿酸排泄促進薬に属する薬剤として、非選択的尿酸再吸収阻害薬であるプロベネシド(ベネシッド)、ベンズブロマロン(ユリノーム)、選択的尿酸再吸収阻害薬であるドチヌラド(ユリス)などが知られている。

 

同種・同効薬の特徴:

本薬剤は、尿酸排泄低下型の患者に用いる。

腎機能障害時には、尿酸排泄促進薬のプロベネシド(ベネシッド)とベンズブロマロン(ユリノーム)は、尿中への尿酸排泄促進剤のため尿量が減少した症例では原則禁忌である。

 

使用上の注意:

服用をはじめて6カ月間は定期的に血算、肝機能検査を行う。

尿が酸性になると結石ができやすくなるので尿アルカリ化薬を併用することもある。

服用中は水分を多く摂取する(2L/日)。

服用中に発作が生じても服用を続けないと発作症状は重症化することがある。

飲みはじめに痛風発作が生じやすくなることがある。急性期は内服を開始しない。

 

主要な同種同効薬内での薬剤選択のポイント:

尿酸排泄促進薬としては一般的には、ベンズブロマロンが頻用されている。ベンズブロマロンのほうが、プロベネシドよりも、尿酸低下作用が強く、作用時間も長い。

ベンズブロマロンは、CYP2D9で代謝される薬剤である。したがって、CYP2D9で代謝される、抗うつ薬であるパロキセチンパキシル)、フルボキサミンデプロメールルボックス)、エスシタロプラム(レクサプロ)、抗精神病薬であるクロルプロマジンウインタミン)、ペルフェナジンピーゼットシー)、レボメプロマジンレボトミンヒルナミン)、リスペリドン(リスパダール)、アリピプラゾール(エビリファイ)、ハロペリドールセレネース)などとの相互作用に注意が必要である。

一方、ベンズブロマロンはペニシリンサリチル酸系などの薬剤との併用に注意をする必要がある。

ドチヌラドもサリチル酸系薬剤との併用は注意する必要がある。

 

投与方法:

1日1~3回: ベンズブロマロン(ユリノーム)

1日2~4回: プロベネシド(ベネシッド)

1日1回:ドチヌラド(ユリス)

 

主な保険適用:

痛風高尿酸血症を伴う高血圧症:ユリノーム

痛風:ベネシッド

痛風高尿酸血症:ユリス

尿酸分解酵素

ポイント(薬理・病態):

尿酸分解酵素薬は、尿酸を分解してアラントインに変換して尿中から排泄させる薬剤である。尿酸分解酵素薬に属する薬剤として、ラスブリカーゼ(ラスリテック)がある。癌の化学療法により癌細胞が破壊されたことにより生じた高尿酸血症に用いられる。

 

同種・同効薬の特徴:

化学療法開始4~24時間前から投与する。

効果発現は投与4時間後に現れる。

 

使用上の注意:

蛋白質の一種なので1度目の使用で抗体が生じる可能性があり、その場合は再投与するとアナフィラキシーショックが生じる。投与期間は最大7日間とする。

 

主な保険適用:

がん化学療法に伴う高尿酸血症:ラスリテック

アシドーシス治療薬

ポイント(薬理・病態):

アシドーシス治療薬は、代謝産物の重炭酸塩が体の中で塩基として作用して尿のpHを上昇させ、尿路結石の形成を防ぐ。

アシドーシス治療薬に属する薬剤として、クエン酸カリウムクエン酸ナトリウム配合薬(ウラリット)がある。

 

同種・同効薬の特徴:

錠剤が服用しにくい場合には、水に溶かして服用できる粉薬(ウラリットU)がある。

 

使用上の注意:

尿路結石を防ぐためには基本的には1日2L 以上の尿量が必要となる。尿検査でpH 6.2-6.8 となるように投与量を調整する。

 

副作用:

下痢・胃部不快感、吐き気、高K血症

 

主な保険適用:

痛風ならびに高尿酸血症における酸性尿の改善:ウラリット

痛風発作治療薬

ポイント(薬理・病態):

コルヒチン(コルヒチン)は、炎症の起きている場所に白血球が遊走するのを阻止すると同時に、白血球による貧食作用を阻止して起炎物質の放出を防ぐため、痛風発作の初期または予防に用いることができる薬剤である。

 

同種・同効薬の特徴:

軽い発作か、発作の予感がするときに用いる薬剤であるが、使用されるケースは少なくなってきている。

 

使用上の注意:

大量に使うと消化器症状の副作用が出ることがある。

初期1~2錠用いることが多い。また、腎障害がある患者では慎重投与が必要である。

コルヒチン(コルヒチン)は、CYP3A4で代謝される薬剤であるため、CYP3A4の活性を阻害する作用を持つ、グレープフルーツジュース、カルシウム拮抗薬であるベラパミル(ワソラン)、ジルチアゼム(ヘルベッサー)、アゾール系抗菌薬であるミコナゾール(フロリード)、イトラコナゾール(イトリゾール)、フルコナゾール(ジフルカン)や、マクロライド系抗生物質であるエリスロマイシン(エリスロシン)、クラリスロマイシン(クラリス)、H2レセプター拮抗薬であるシメチジン(タガメット)、制吐薬であるアプレピタント(イメンド)との併用時は本薬剤の血中濃度の上昇による副作用発現に注意を要する。

 

主な保険適応:

痛風発作: コルヒチン

専門医紹介のタイミング

治療抵抗性の高尿酸血症は専門医に紹介する。

また、腎不全、悪性腫瘍の化学療法中の二次性の高尿酸血症も専門による治療が望ましい。

入院適応

腎不全、悪性腫瘍の化学療法中の二次性の高尿酸血症に関しては、入院の適応となる場合がある。