家庭医療と痛みの診察室

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上肢のCRPSに対して局所静脈内神経ブロック療法が有効

上肢の神経障害性疼痛に対する局所静脈内神経ブロック療法

村川和重 他,  京都医学会雑誌, 68 (2) :9-13:2021

背景

 神経障害性疼痛の中でも, 複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome 以下 CRPS)は, 軟部組織や骨, 神経損傷後に発生して, 組織損傷の予測より重度な疼痛が長期間に渡って持続する疾患である.

 慢性的な神経障害性疼痛が持続しており, 治療には極めて難渋することが多く, ペインクリニックに難治性疼痛症例に対する治療を依頼されることも少なくない.

 今回はこうした症例の中でも, 上肢の難治性疼痛6症例に対して, 局所静脈内神経ブロック療法(intravenous regional block 以下 IVRB)を試行した.

 全例に於いて, すでに種々の薬物療法が試みられていたにも関わらず, 鎮痛効果が不十分で, 強い痛みが持続していた.

 こうした経過から薬物療法の継続には限界の状態と考えたので, Neuromodulationによる治療法を選択した.

 そして, 神経ブロック療法の施行に当たっては, 末梢神経の傷害の可能性を出来るだけ排除することが可能なneuromodulation治療法として, IVRBを選択した.

方法

 IVRBの施行方法としては, 疼痛部位の近傍の静脈路を確保した後に, 中枢側をターニケットにて駆血し, 2%lidocaine 10mlを注入した.

 注入後は20分間に渡って, ターニケットによる血流遮断を継続した後, 緩徐にターニケットを減圧して, 完全な除圧にて終了とした.

結果

 全症例において, 終了直後には麻酔効果が残存しており, すべての症例で痛みは消失していた.

 安静観察後に治療を終了として, 帰宅させた. 帰宅後は, 次回の来院時までの疼痛の様子を観察して貰い, 同様なIVRBを反復施行して, 疼痛状態を観察した.

 治療効果としては, 静脈路の確保に難渋してIVRBの施行が数回に終わり, VAS値が不変の1例を除いた5例に関しては, 著明なVASの減少を認めた.

結論

 難治性の疼痛である上肢のCRPSに対して, IVRBの有効性が強く示唆された.

 

所感

 上肢のCRPSに対して局所静脈内神経ブロック療法が有効なようです。