家庭医療と痛みの診察室

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小児の骨折に超音波診断が有用(豪州ナースプラクティショナーの実践)

臨床的に転位がない前腕遠位端骨折を有する小児に対して、看護師が超音波診断を行った場合のX線との比較:診断的研究

Snelling PJ, Jones P, Keijzers G, Bade D, Herd DW, Ware RS. Nurse practitioner administered point-of-care ultrasound compared with X-ray for children with clinically non-angulated distal forearm fractures in the ED: a diagnostic study. Emerg Med J. 2020 Sep 8:emermed-2020-209689. doi: 10.1136/emermed-2020-209689. Epub ahead of print. PMID: 32900856.

背景

 小児の前腕遠位部骨折は、一般的にEDで見られる症状である。これらの骨折は、X線検査の代わりにポイントオブケア超音波検査(POCUS)で診断することができる。小児の骨折の診断にはナースプラクティショナー(NP)が頼りにされていることを考えると、NPが実施するPOCUSとX線との比較で診断精度を説明することが重要である。

方法

 このプロスペクティブ診断研究は、2018年2月から2019年4月までの間、オーストラリアのクイーンズランド州にある第3次小児科病院で実施された。参加者は、臨床的に転位がない前腕遠位部骨折が疑われる4~16歳の小児であった。橈骨遠位部と尺骨の6ビューNP投与POCUSからの診断を、2ビューX線の参照基準と比較した。各患者は両方の画像診断を受けた。前腕全体の診断は、両方のモダリティについて、「なし」、「バックル」、または「その他」の骨折に分類された。主要アウトカムは、「いずれかの」骨折(「バックル骨折」と「その他の」骨折を合わせたもの)の診断精度であった。副次的転帰として、「その他の」骨折と「座骨」と「無」骨折を合わせた骨折の診断精度、疼痛、撮影時間、骨折の種類に対する嗜好性が含まれた。

結果

 募集した204人の患者のうち、129人がX線診断で前腕骨折と診断された。NP投与のPOCUSの感度および特異度はそれぞれ94.6%(95%CI 89.2%~97.3%)および85.3%(95%CI 75.6%~91.6%)であった。その他の」骨折(主に皮質裂孔骨折)は、「バックル」骨折/「無」骨折と比較して、感度81.0%(95%CI 69.1%~89.1%)、特異度95.9%(95%CI 91.3%~98.1%)であった。疼痛と画像化期間はモダリティ間で臨床的に類似していた。患者、両親、NPはPOCUSを好む傾向があった。

結論

 NPによるPOCUSは、非拘縮性前腕遠位部損傷を呈する小児患者に対して臨床的に許容できる診断精度を有していた。これには、「あらゆる」骨折の診断に対する感度と皮質裂孔骨折のみの診断に対する特異度が含まれていた。POCUSが好まれていること、また、痛みや持続時間にモダリティ間の差がないことを考えると、今後の研究では、無作為化比較試験でPOCUSとX線を比較した機能的転帰を検討すべきである。

 

所感

 日本では現在検討段階であるナースプラクティショナーですが、骨折を疑った小児に対して超音波診断が有用であることをまとめた研究です。感度も特異度も高いですね。

 骨折をエコーで見ることが普通になってきたぶん、エコーの技術もしっかりトレーニングしていきたいです。