慢性的な首の痛みに電気治療は効くかもしれない（コクランレビュー）

慢性的な首の痛みのための経皮的電気神経刺激（TENS）

Martimbianco ALC, Porfírio GJ, Pacheco RL, Torloni MR, Riera R. Transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) for chronic neck pain. Cochrane Database Syst Rev. 2019 Dec 12;12(12):CD011927. doi: 10.1002/14651858.CD011927.pub2. PMID: 31830313; PMCID: PMC6953309.

背景

　慢性的な首の痛みは、一般人口の10%から24%に影響を与え、非常に蔓延している状態です。経皮的電気神経刺激（TENS）は、鎮痛効果を得るための電気刺激の非侵襲的な経皮的使用である。慢性的な首の痛みなど、日常生活に大きな影響を与える痛みを伴う筋骨格系の疾患の補助治療として臨床現場で使用されている、シンプルで低コストで安全な介入である。本レビューは、2013年に発表された頸部痛に対する電気療法に関するコクラン・レビューを分割したものであり、特に慢性頸部痛に対するTENSに焦点を当てている。

目的

　慢性頸部痛の治療に対する経皮的電気神経刺激（TENS）（単独または他の介入との併用）の有効性を、偽薬や他の臨床介入と比較して評価すること。

検索方法

　Cochrane Back and Neck Trials Register、CENTRAL、MEDLINE、Embase、その他5つのデータベースと2つの試験登録を2018年11月9日まで検索した。また、関連する研究のリファレンスリストをスクリーニングし、追加の試験を特定した。言語、出典、出版日の制限はなかった。

選定基準

　我々は、慢性頸部痛（12週間以上持続）を有する成人（18歳以上）が関与するランダム化比較試験（RCT）で、TENS単独または他の治療との併用と、積極的または非活動的な治療とを比較したものを含めた。主要アウトカムは疼痛、障害、有害事象であった。

データ収集と分析

　2人の独立したレビュー執筆者が試験を選択し、データを抽出し、含まれる研究のバイアスのリスクを評価した。意見の相違があった場合には、3人目のレビュー執筆者に相談した。個々の試験のバイアスのリスクを評価するためにコクランの「Risk of bias」ツール（コクランバックアンドネック社が翻案）を使用し、エビデンスの確実性を評価するためにGRADEを使用した。二分法アウトカムについてはリスク比（RR）を用いて治療効果を、連続アウトカムについては平均差（MD）を測定し、それぞれの95％信頼区間（CI）を示した。

主な結果

　3カ国（トルコ、ヨルダン、中国）で実施された、平均年齢31.7～55.5歳の総勢651人の7つのRCTを対象とした。追跡期間は1週間から6ヶ月であった。ほとんどのRCTでは、周波数60Hz～100Hz、パルス幅40μs～250μsの連続TENSを、毎日20～60分のセッションで、収縮を伴わないヒリヒリ感と表現される耐性のある強度で使用した。介入とアウトカムに不均一性があるため、個々の研究データをメタアナリシスにプールしなかった。全体として、ほとんどの研究は選択バイアスのリスクが低く、性能バイアスおよび検出バイアスのリスクが高いと判断した。GRADEアプローチに基づき、短期（治療後3ヵ月まで）の追跡調査において、従来型TENSと偽TENSを比較した場合の疼痛（Visual Analogue Scale（VAS）で評価）に対する効果については、2つの試験から非常に不確実性の低いエビデンスが得られた。MD -0.10、95％CI -0.97～0.77）および痛みの改善を示した参加者の割合（RR 1.57、95％CI 0.84～2.92）であった。どの研究も障害または有害事象について報告していなかった。

著者らの結論

　本レビューでは、TENSと偽TENSとの間で首の痛みの軽減に差があることを示す非常に確実性の低い証拠が見つかったため、効果の推定値については不明である。現在のところ、慢性頸部痛患者におけるTENSの使用に関するエビデンスは不十分である。堅牢な結論に到達するためには、十分に設計され、実施され、報告された追加のRCTが必要である。