家庭医療と痛みの診察室

家庭医療と痛みの治療を中心に、調べたことや感じたことをアップしていきます。

大腿骨の骨折には早めにブロック注射をすべき

大腿骨近位部骨折に対する大腿神経ブロックによる疼痛管理の有効性

Author:森 圭介(長崎大学病院 外傷センター), 宮本 俊之, 田口 憲士, 土居 満, 西野 雄一朗, 尾崎 誠
Source: 骨折 (0287-2285)42巻3号 Page872-875(2020.05)

背景

  高齢者における疼痛は、せん妄やリハビリテーション遅延の一要因とされているが、本邦では未だ系統的な術前術後の疼痛管理は確立されていない。

目的

 高齢者の大腿骨近位部骨折に対する術前術後の疼痛管理で大腿神経ブロックが有効かを明らかにすること。

 

対象

 高齢者で転位型の大腿骨頸部骨折および不安定型の大腿骨転子部骨折に対して、受傷後24時間以内に全身麻酔下に骨接合術を行った症例

方法

  大腿神経ブロックを導入する前後で術前術後のせん妄・鎮痛薬の使用の有無などについて検討

結果

 ブロック群(14例)では、せん妄は0例、鎮痛剤の使用は1例であった。非ブロック群(17例)では、せん妄は4例、鎮痛剤の使用は4例であった。また大腿神経ブロックによる有害事象は認めなかった。

結論

  大腿骨近位部骨折の最大の疼痛管理は早期手術による骨折の安定化である。今回の検討で早期手術に加えて補助的な疼痛管理として大腿神経ブロックの有効性が示唆された。

所感

 ここでいうブロック注射とは、大腿神経ブロックもしくは腸骨筋膜下コンパートメントブロックの2つです。どちらも同等の効果とされており、術者の好みで選択されています。23Gカテラン針を用いて0.5%レボブピバカイン20mlを注入し、前者はエコーガイド下、後者はエコーは使用していません。

 レントゲンで移乗する際にも痛みがあるため、受診時点で全身状態を見てなるべく早めにブロックできればいいなと思います。