慢性腰痛にマニピュレーションやモビライゼーションは効果が少ない

軽度から中等度の慢性腰痛を持つ若年成人における脊椎マニピュレーションとモビライゼーション療法の効果：無作為化臨床試験。

Thomas JS, Clark BC, Russ DW, et al. Effect of Spinal Manipulative and Mobilization Therapies in Young Adults With Mild to Moderate Chronic Low Back Pain: A Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open. 2020 Aug 3;3(8):e2012589. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2020.12589. (Original study)

重要性

　腰痛（LBP）は治療を求める最も一般的な理由の一つである。手技療法はLBPの一般的な治療法であるが、スラスト（脊椎マニピュレーション）と非スラスト（脊椎モビライゼーション）の効果を直接比較した研究はほとんどない。

目的

　慢性LBPの若年成人コホートを対象に、疼痛と障害を軽減するための脊椎マニピュレーションと脊椎モビライゼーションの有効性をプラセボ対照群（偽コールドレーザー）と比較して評価すること。

デザイン、設定、および参加者

　この単盲検（治験責任医師盲検）プラセボ対照無作為化臨床試験は、2013年6月1日から2017年8月31日まで、オハイオ大学のオハイオ筋骨格・神経学研究所で3つの治療群を対象に実施された。適格性を評価した成人患者4903人のうち、4741人が包含基準を満たしておらず、慢性LBP患者162人が3つの治療群のうち1つに無作為に割り付けられる資格を得た。募集は 2013 年 6 月 1 日に開始され、一次終了日は 2017 年 8 月 31 日であった。2017年9月1日から2020年1月20日までのデータを解析した。

介入

　参加者は、3週間の間に、（1）脊椎マニピュレーション、（2）脊椎モビライゼーション、または（3）シャムコールドレーザー治療（プラセボ）の6回の治療セッションを受けた。

主なアウトカムおよび測定法

　主要評価項目は、過去7日間のNumerical Pain Rating Scale（NPRS）スコアのベースラインからの変化と、6回の治療終了後48～72時間後のRoland-Morris Disability Questionnaire（Roland-Morris障害質問票）による障害の変化（スコアの範囲は0～24で、スコアが高いほど障害が大きいことを示す）であった。

結果

　慢性LBP（平均[SD]年齢、25.0[6.2]歳、女性92人[57％]）を有する162人（平均[SD]年齢、25.0[6.2]歳、女性92人）が無作為に割り付けられた（平均[SD]NPRSスコア、1-10スケールで4.3[2.6]、スコアが高いほど痛みが強いことを示す）。参加者は54人が脊椎マニピュレーション群、54人が脊椎モビライゼーション群、54人がプラセボ群に無作為に割り付けられた。性別、年齢、体格指数、LBP症状の持続期間、抑うつ状態、恐怖回避、現在の痛み、過去7日間の平均痛み、自己申告による障害については、有意な群間差は認められなかった。主要エンドポイントでは、脊椎マニピュレーションと脊椎モビライゼーション（0.24［95％CI、-0.38～0.86］；P＝0.45）、脊椎マニピュレーションとプラセボ（-0.03［95％CI、-0.65～0.59］；P＝0.92）、または脊椎モビライゼーションとプラセボ（-0.26［95％CI、-0.38～0.85］；P＝0.39）の間で、疼痛スコアの変化に有意差は認められなかった。脊椎マニピュレーションと脊椎モビライゼーション（-1.00［95％CI、-2.27～0.36］；P = 0.14）、脊椎マニピュレーションとプラセボ（-0.07［95％CI、-1.43～1.29］；P = 0.92）、または脊椎モビライゼーションとプラセボ（0.93［95％CI、-0.41～2.29］；P = 0.17）の間で、自己申告障害スコアの変化に有意差は認められなかった。