家庭医療と痛みの診察室

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慢性的な筋骨格痛には運動療法が効果的

高齢者の慢性筋骨格系疼痛に対する神経筋運動:香港のプライマリーケアにおける無作為化比較試験

Sit RWS, Choi SYK, Wang B, Chan DCC, Zhang D, Yip BHK, Wong SYS. Neuromuscular exercise for chronic musculoskeletal pain in older people: a randomised controlled trial in primary care in Hong Kong. Br J Gen Pract. 2020 Dec 4:bjgp20X714053. doi: 10.3399/bjgp20X714053. Epub ahead of print. PMID: 33495205; PMCID: PMC7846355.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

背景

 運動療法は、慢性筋骨格系(MSK)疼痛の管理において、プライマリーケア医(PCP)によって一般的に処方されている。

目的

 慢性MSK疼痛を有する高齢者を対象とした指導付き神経筋(NM)運動プログラムの臨床的有効性を評価する。

デザインと設定

 本試験は12週間の2群無作為化比較試験であり、6週間の指導付きNM運動とウェイティングリスト対照群を比較した。著者らは7つの公立のプライマリーケアクリニックで慢性MSK疼痛を持つ72名の参加者を登録した。

方法

 参加者は12のブロックサイズで無作為にNM群(n = 36)と対照群(n = 36)に1:1の比率で割り付けられた。

 データはベースライン、6週目、12週目に収集した。主要アウトカムは、介入6週後のBrief Pain Inventory(BPI)疼痛重症度スコアであった。

 副次的転帰として、BPI干渉スコア、Pain Self-Efficacy Questionnaire(PSEQ)、Short Form Health Survey(SF-12)、7項目のGeneralised Anxiety Disorder(GAD-7)、9項目のPatient Health Questionnaire(PHQ-9)スコア、Timed-Up-and-Goテストとハンドグリップ強度を用いた機能測定が行われた。

結果

 6週間の時点で、NM群は対照群と比較してBPI疼痛重症度スコア(群間差=-1.27;95%信頼区間[CI]=-2.08~-0.45;P<0.01)、PSEQ(群間差=6.5;95%CI=2.22~10.77;P<0.01)、SF-12身体的スコア(群間差=3.4;95%CI=0.05~6.75;P<0.05)で有意に大きな改善を示した。

 BPI干渉とPHQ-9スコアについても、統計学的に有意な全体的な改善傾向が認められた。

結論

 NM運動は、慢性MSK疼痛を有する高齢者において、疼痛を軽減し、自己効力感と身体機能を改善する可能性がある。PCPによる運動処方の選択肢となりうる。

キーワード:高齢者;慢性筋骨格系疼痛;運動療法;神経筋運動;疼痛;無作為化比較試験

 

所感

 プライマリケア医にとって、慢性的な筋骨格痛に対する運動療法は、有効な治療の一つです。