家庭医療と痛みの診察室

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筋膜性疼痛による首・肩の痛みに対する深頸神経叢ブロック:無作為化臨床試験

Naja AS, Madi N, Tfayli Y, Ziade F, Haber G, Kanawati S, Naja Z. Deep Cervical Plexus Block for Neck and Shoulder Pain Due to Myofascial Pain: A Randomized Clinical Trial. Clin J Pain. 2021 Feb 1;37(2):133-139. doi: 10.1097/AJP.0000000000000904. PMID: 33273276.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

目的

 筋膜性疼痛は、確定的な治療法がない局所痛の最も一般的な原因の一つである。この無作為化臨床試験は、筋筋筋膜性頸部・肩部痛の治療に対して、深頸神経叢ブロックとプラセボ注射(偽ブロック)の有効性を、ブロック後2週間の追跡期間中の鎮痛剤の消費量と痛みの観点から評価するために実施された。

材料と方法

 患者を無作為に2群に分けた。I群(ブロック)には深頸神経叢ブロック、II群(プラセボ)には通常の生理食塩水を投与した。ブロック群34名、プラセボ群32名の計66名を対象とした。

試験結果

 介入2週間後、平均疼痛持続時間はブロック群で有意に低下した。ブロック群とプラセボ群では、それぞれ1.38±1.39対5.25±1.72であった(P<0.0001)。

 痛みの強さはブロック群で有意に減少し、ブロック群では2.9%の患者に重度の痛みが認められたのに対し、プラセボ群では53.1%の患者に重度の痛みが認められた(P<0.0001)。

 ブロック投与2週間後の平均オピオイド消費量は、トラマドール換算で21.1±44.2mgであったのに対し、ブロック群では166.1±118.8mg、プラセボ群では166.1±118.8mgであった。

 多変量解析の結果、疼痛歴の長い患者ほど2週間後の疼痛スコアが高かった。慢性疼痛の既往歴のある患者ではブロック群の影響が最も少なかったため,回復の可能性は疼痛の持続時間に影響された。

考察

 この手法は、筋膜性疼痛に対する薬理学的治療や他の非薬理学的治療の代替手段となりうる。

 

所感

 深頸神経叢ブロックは頚椎症や頸肩腕症候群などに対して用いられる手技です。この研究では筋膜性疼痛に対しておこなわれていますが、個人的にはいわゆる「筋膜リリース」として筋膜間に注射した方が安全な気がします。

 深頸神経叢ブロックは深いところでおこなうので、合併症が怖いためです。

 

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