家庭医療と痛みの診察室

家庭医療と痛みの治療を中心に、調べたことや感じたことをアップしていきます。

帯状疱疹関連痛にRSSBが効果的かもしれない

Retro-superior costotransverse ligament space blockにより良好な鎮痛効果が得られた胸髄神経帯状疱疹関連痛の2症例


大路奈津子、大路牧人、青木 浩、藤本得宮子、小松祐也、寺尾嘉彰
長崎労災病院 麻酔科

日本ペインクリニック学会 第2回九州支部学術集会

はじめに

 近年、上肋横突靭帯(superior costotransverse ligament: SCTL)後面のスペー ス(retro-SCTL space)に注入された薬液は、容易に傍脊椎腔まで到達することがわかってきた。

 今回我々は、胸髄神経帯状疱疹関連痛に対して上肋横突靭帯後面スペースへのブロック(retro-SCTLspace block: RSSB)を行った 2 症例を経験したので報告する。

【症 例 1】

 78 歳男性、主訴は左胸背部痛。初診 15 日前に左Th5 領域の帯状疱疹を発症し、薬物療法開始後も痛みが強く当科紹介初診した。

 初診時の痛みはnumerical rating scale(NRS)で 10 だった。冠攣縮性狭心症でバイアスピリンを内服中だったため、Th5 レベ ルでRSSB(超音波ガイド下、治療薬は 1%メピバカイン 10ml、もしくは 0.25%レボブ ピバカイン 10ml)を施行した。

 ブロック後は左胸背部の疼痛範囲すべてに鎮痛効果が得られた。RSSBを定期的に繰り返し行い、痛みが消失したため初診 64 日で終診した。

【症 例 2】

 80 歳男性、主訴は右腹部、腰部痛。初診 13 日前に右Th10 領域の帯状疱疹を発症した。薬物療法が開始されたが痛みが増悪し、当科紹介初診した。

 初診時の痛みはNRS で 8 だった。Th10 レベルでRSSBを開始し、痛みは徐々に軽減した。初診 2 か月でNRS は 3 前後となり、RSSB継続中である。

考察

 胸髄神経帯状疱疹関連痛に対する神経ブロック療法は、胸部硬膜外ブロックや傍脊椎神経ブロック、肋間神経ブロックなどが選択される。しかしこれらのブロックは血腫による合併症の報告もあり、抗凝固薬や抗血栓薬内服中などの理由で施行が躊躇される場合もある。今回施行したRSSBは、脊柱管内や傍脊椎腔まで針先を進めることなく施行可能で、効果は傍脊椎神経ブロックと同等と考えられる。神経ブロックを定期的に複数回行うことが多いペインクリニック領域でも、RSSBは有用な神経ブロック法となりうる。

まとめ

 胸髄神経帯状疱疹関連痛 2 症例に対してRSSBを行い、良好な鎮痛効果が 得られた。

 

所感

 帯状疱疹関連痛に対して、上肋横突靭帯後面スペースへのブロック(retro-SCTLspace block: RSSB)が効果的との学会報告です。