家庭医療と痛みの診察室

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高齢者に回想法を用いると抑うつを改善し、幸福感を感じやすくなる(メタアナリシス)

認知機能が損なわれていない高齢者における心理的幸福を改善する上での回想に基づく介入の有効性。システマティックレビューとメタアナリシス

Tam W, Poon SN, Mahendran R, Kua EH, Wu XV. The effectiveness of reminiscence-based intervention on improving psychological well-being in cognitively intact older adults: A systematic review and meta-analysis. Int J Nurs Stud. 2020 Dec 6;114:103847. doi: 10.1016/j.ijnurstu.2020.103847. Epub ahead of print. PMID: 33352435.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

背景

 高齢化は、公衆衛生上最も重要な問題の一つである。世界保健機関(WHO)は、2010年から2050年までに65歳以上の高齢者の数が3倍になると予測している。高齢者の機能的能力と生活の質をどのように向上させるかを検討することが大きな課題となるだろう。認知症高齢者の心理的転帰に効果があることは広く報告されているが、認知機能が損なわれていない高齢者への効果は明確に評価されていない。

目的

 今回のシステマティックレビューの目的は、認知的に無傷の高齢者の心理的転帰に対する回想に基づく介入の効果に関する既存のエビデンスを評価することである。

レビュー方法

 CINAHL、EMBASE、MEDLINE、PsycINFOを含む一般的に使用されている英語のデータベースを、開始から2020年3月31日まで検索した。認知機能が損なわれていない60歳以上の高齢者の心理的転帰に対する回想に基づく介入の効果を検討した研究を対象とした。異なる心理学的転帰に対する効果を総合的に検討するためにメタアナリシスを実施した。

結果

 1,829人の高齢者を対象とした31件の研究が含まれた。抑うつ症状と生活満足度のプール標準化平均差はそれぞれ-0.38(95%CI:-0.69-0.07)および0.33(95%CI:0.14-0.52)であった。メタ解析はできなかったが、自尊心、心理的幸福感、幸福感には正の効果が認められた。

結論

 認知機能が損なわれていない高齢者を対象とした回想ベースの介入により、抑うつ症状の有意な軽減と生活満足度の向上が明らかになった。また、回想に基づく介入は自尊心を高め、心理的な幸福感や幸福感を促進する効果があった。これらの結果から、回想に基づく介入は、認知機能が損なわれていない高齢者の心理的幸福感を向上させるための有効な解決策である可能性が示唆された。このような非薬理学的アプローチは、高齢者にも地域レベルで推奨される可能性がある。

キーワード 認知的無傷高齢者; うつ病; 幸福感; ライフレビュー介入; 生活満足度; 心理的幸福感; 回想介入; 自尊心.

 

所感

 高齢者になると様々な要因で抑うつ的になったりします。日常生活に支障をきたすほどになると、抗うつ剤を処方したりしますが、そこまででない患者さんの対応には苦慮しておりました。回想法を実施することで日常の幸福感が増すならば、とても良い介入だと思います。