家庭医療と痛みの診察室

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神経変性疾患の患者に対する全身の振動療法(コクランレビュー)

神経変性疾患患者のための全身振動トレーニン

Sitjà Rabert M, Rigau Comas D, Fort Vanmeerhaeghe A, Santoyo Medina C, Roqué i Figuls M, Romero-Rodríguez D, Bonfill Cosp X. Whole-body vibration training for patients with neurodegenerative disease. Cochrane Database Syst Rev. 2012 Feb 15;(2):CD009097. doi: 10.1002/14651858.CD009097.pub2. PMID: 22336858.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

背景

 全身振動(WBV)は、標準的なリハビリテーションプログラムを補完するトレーニングであり、神経変性疾患患者の感覚運動系のパフォーマンスに効果があると考えられている。

目的

 本レビューの目的は、神経変性疾患患者の基本的な日常生活動作(ADL)に応じた機能的パフォーマンスを向上させるWBVの有効性を検討することであった。また、疾患の徴候や症状、身体のバランス、歩行、筋力、QOL、有害事象への影響を評価したいと考えた。

検索方法

 Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(The Cochrane Library, 2011 Issue 4)、MEDLINE(1964年~2011年5月6日、PubMed経由)、EMBASE(1980年~2011年5月6日、Ovid経由)、PeDro(1929年~2011年5月、Webサイト経由)、CINAHL(2011年9月~、Ovid経由)、PsycINFO(1806年~2011年5月6日、Ovid経由)の電子データベースを検索した。

選定基準

 WBVの単発または複数セッションと受動的介入、他の能動的理学療法、または振動パラメータの異なるWBVを比較した無作為化比較試験を対象とした。

データ収集と分析

 2人のレビュー執筆者が独立して試験を選択し、試験の質を評価し、データを抽出した。意見の相違は議論によって解決され、必要に応じて第3のレビュー著者に紹介された。

主な結果

 我々は10件の試験を組み入れたが、そのうち6件はパーキンソン病に焦点を当てたもので、4件は多発性硬化症に焦点を当てたものであった。いずれの試験も主要アウトカム(機能的パフォーマンス)に関するデータは報告されていなかった。パーキンソン病では、2件の研究をプールした後、WBVを1回行うと、Timed Up and Goテスト(TUG)を用いて測定した歩行の有意な改善が、立位運動と比較してみられた(平均差-3.09、95%信頼区間-5.60~-0.59;P = 0.02;I(2) = 0%)。それにもかかわらず、WBVの継続時間を長くしても、身体のバランスや統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)で測定された徴候や症状において、理学療法と比較して有意な結果は得られなかった。多発性硬化症では、WBVが身体のバランス、歩行、筋力、生活の質に短期的または長期的な効果を示す証拠はなかった。有害事象が報告された試験はほとんどなかったが、有害事象が報告された試験では、介入は安全であるように思われた。

著者らの結論

 神経変性疾患患者の機能的パフォーマンスに対するWBVトレーニングの効果についてのエビデンスは不十分である。また、パーキンソン病多発性硬化症における他の能動的物理療法や受動的介入と比較して、疾患の徴候や症状、身体のバランス、歩行、筋力、生活の質に対するWBVトレーニングの有益な効果についてのエビデンスは不十分である。決定的な推奨が確立されるまでには、他の機能検査を評価し、安全性を正確に評価するためのより多くの研究が必要である。

 

所感

 パーキンソン病多発性硬化症の患者に対して全身の振動療法をおこなうと、良い効果はあるようですがエビデンスが不十分との結論です。今後の研究結果を見ていきたいと思います。