家庭医療と痛みの診察室

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診療所で抗うつ薬を中止すると、再発する可能性が高い

プライマリーケアにおける抗うつ薬の維持・中止について

Lewis G, Marston L, Duffy L, Freemantle N, Gilbody S, Hunter R, Kendrick T, Kessler D, Mangin D, King M, Lanham P, Moore M, Nazareth I, Wiles N, Bacon F, Bird M, Brabyn S, Burns A, Clarke CS, Hunt A, Pervin J, Lewis G. Maintenance or Discontinuation of Antidepressants in Primary Care. N Engl J Med. 2021 Sep 30;385(14):1257-1267. doi: 10.1056/NEJMoa2106356. PMID: 34587384.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

背景

 プライマリーケアで治療を受けているうつ病患者は、長期間にわたって抗うつ薬を投与されることがある。このような状況で抗うつ薬治療を維持または中止した場合の効果についてのデータは限られている。

方法

 英国の150の一般診療所で治療を受けている成人を対象に,無作為化二重盲検試験を行った。患者は全員、少なくとも2回のうつ病エピソードの既往があるか、2年以上抗うつ薬を服用しており、抗うつ薬の中止を検討するに足る健康状態であった。

 citalopram、fluoxetine、sertraline、mirtazapineを投与されていた患者を、現在の抗うつ薬治療を維持する群(維持群)と、マッチングプラセボを使用して抗うつ薬治療を漸減・中止する群(中止群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。

 主要評価項目は、52週間の試験期間中の最初のうつ病の再発で、time-to-event分析で評価した。副次評価項目は、抑うつ症状、不安症状、身体的症状、離脱症状QOL抗うつ薬またはプラセボを中止するまでの期間、およびグローバルな気分評価であった。

結果

 合計1466名の患者がスクリーニングを受けた。これらの患者のうち478名が試験に登録された(維持群238名、中止群240名)。患者の平均年齢は54歳で、73%が女性であった。

 試験の割り当てに対するアドヒアランスは、維持療法群で70%、中止療法群で52%であった。52週目までに再発したのは、維持療法群では238人中92人(39%)、中止療法群では240人中135人(56%)であった(ハザード比:2.06、95%信頼区間:1.56~2.70、P<0.001)。

 副次評価項目は、主要評価項目とおおむね同じ方向性を示した。中止群の患者は維持群の患者に比べて、抑うつ、不安、引きこもりなどの症状が強かった。

結論

 プライマリーケア診療所で抗うつ薬治療を中止するのに十分な体調を感じている患者のうち,投薬を中止するように割り当てられた患者は,現在の治療を維持するように割り当てられた患者よりも,52週までにうつ病を再発するリスクが高かった。(National Institute for Health Researchの助成を受け、ANTLER ISRCTN番号、ISRCTN15969819)。

 

所感

 診療所で抗うつ薬を中止すると、再発する可能性が高いとのことです。