家庭医療と痛みの診察室

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悲しみは痛みを強くする

悲しみは痛みを強くする - 急性痛と慢性痛について

吉野敦雄. 医学のあゆみ 279 (7) : 725-726 , 2021.

要約

 国際疼痛学会は痛みを「不快な感受性・情動性の体験である」と定義しており, 痛みは感覚そのものだけではなく, 情動的な側面も同時に持ち合わせている.

 また悲しみや怒りなどネガティブな情動下において, 痛みの強さは大きくなるとされている.

 さらに慢性痛の症状形成の一要因として情動が関与しているともいわれている.

 このように情動は急性痛と慢性痛それぞれにおいて密接な関係がある.

 

 ここでは主に情動を悲しみに絞って考察する.

 

 「悲しみと痛み」

 

 悲しみとは, 対人面での別離や自己の誇りや財産など自己にとって重要な対象物の喪失に伴う情緒的反応である.

 通常の状態に比べて悲しいときには, 同じ物理量の痛み刺激を受けた場合, 痛み体験が強くみられるという報告がある.

 

所感

 肉体的な痛みだけでなく、心理的な痛みもよく言われるところです。心理的な要因が肉体的な痛みに密接に関わっているため、医療者は患者さんの心にもしっかり寄り添う必要があると思います。