家庭医療と痛みの診察室

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筋トレすると、鍛えた筋のみならず全身の痛みが和らぐ

ヒトにおける運動誘発性痛覚過敏と条件付き疼痛調節の類似性

Vaegter HB, Handberg G, Graven-Nielsen T. Similarities between exercise-induced hypoalgesia and conditioned pain modulation in humans. Pain. 2014;155(1):158-167. doi:10.1016/j.pain.2013.09.023

論文要約

 疼痛抑制機構は、運動誘発性痛覚過敏(EIH)と条件付き疼痛調節(CPM)というパラダイムで評価されることが多い。本研究では、EIHとCPMの空間的・時間的発現は同程度であるという仮説を立てた。

 参加者は18歳から65歳までの健康な80人(女性40人)で、2つの異なる日にデータを収集した無作為化反復測定クロスオーバー試験であった。CPMは2種類のコールドプレッサーテスト(手と足)で評価された。EIHは、有酸素自転車運動の2つの強度と等尺筋収縮運動の2つの強度(腕と脚)によって評価された。

 コールドプレッサー刺激および運動に使用した四肢の局所および遠隔部位で、コンディショニング/運動の前、運動中、運動後、および15分後に圧痛閾値(PPT)が記録された。

 PPTsは、コールドプレッサー試験中および低強度の自転車走行を除くすべての運動条件の後の両方で、局所および遠隔部位で増加した。自転車走行後のEIHは男性よりも女性の方が高かった。等尺運動後のCPMとEIH反応は男女で同程度であり、年齢による影響はなかった。

 EIH反応は、すべての運動条件において、非運動部位と比較して、運動している身体部位で大きかった。高強度の運動では低強度の運動よりも大きなEIH反応が得られた。コールドプレッサー試験中のPPTの変化と運動後のPPTの変化は相関しなかった。CPM応答は局所的顕在性に支配されず、その効果は刺激時にのみ認められたが、運動ではより大きな局所的顕在性が認められ、その効果は運動後にも認められた。

 

所感

 解釈が難しい論文ですが、要は筋力トレーニングそのものにも疼痛を改善する効果が
あり,しかも疼痛改善効果は運動部(鍛えた筋)のみならず全身に及ぶようです。

 痛みで動かないご高齢の方は多いですが、むしろ痛くない部分の筋トレをすることで痛みを和らげることができます。僕も筋トレしなければ。。。

 

参考文献

下 和弘, 松原 貴子, 4.高齢者の疼痛予防運動(レベルに合わせた運動療法), 日本老年医学会雑誌, 2020, 57 巻, 3 号, p. 260-266,