家庭医療と痛みの診察室

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股関節骨折の周術期にFICBが安全で有効性が高い

高齢者の股関節骨折患者の周術期疼痛管理のための腸骨筋膜コンパートメントブロック。無作為化比較試験のシステマティックレビュー

Wan HY, Li SY, Ji W, Yu B, Jiang N. Fascia Iliaca Compartment Block for Perioperative Pain Management of Geriatric Patients with Hip Fractures: A Systematic Review of Randomized Controlled Trials. Pain Res Manag. 2020 Nov 25;2020:8503963. doi: 10.1155/2020/8503963. PMID: 33294087; PMCID: PMC7714603.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

背景

 高齢化社会の継続的な増加に伴い、老人の脆弱性股関節骨折患者数は急増しており、タイムリーな手術は依然として治療の柱となっている。

 しかし,十分な効果を得るためには,十分かつ効果的な疼痛コントロールが前提となる。

 本システマティックレビューでは、老人の股関節骨折患者の周術期疼痛管理のための鎮痛戦略として、腸骨筋膜コンパートメントブロック(FICB)の使用についてまとめることを目的とした。

方法

 PubMedおよびEmbaseデータベースを用いて,2000年1月1日から2020年5月31日までの間に,高齢者の股関節骨折の疼痛管理にFICBを適用したことを報告し,英語で発表された無作為化対照試験(RCT)を検索した。

 収録されたRCTの質の評価にはmodified Jadad scaleを用いた。対象となったRCTの主要アウトカムを提示し、議論した。

結果

 合計27のRCT、2478例が最終的に含まれた。今回の結果から、入院後や救急部では、FICBは従来の鎮痛法と同等かそれ以上の鎮痛効果が得られ、追加の鎮痛薬の消費も抑えられることが示唆された。

 また、脊椎麻酔の前にFICBを使用することで、優れた鎮痛効果が得られ、脊椎麻酔の施行が容易になること、術後にFICBを使用することで、鎮痛剤の追加使用を抑えながら効果的に疼痛を緩和することができ、早期の動員や合併症の予防につながることが示唆された。

結論

  FICBは安全で信頼性が高く、実施しやすい手技であり、高齢者の股関節骨折患者の周術期管理において十分な痛みの軽減を図ることができる。

 

所感

 股関節骨折の周術期疼痛に対して、腸骨筋膜下コンパートメントブロックが有効です。その場所を下図に示しておきます。

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