家庭医療と痛みの診察室

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鼻出血に対してトラネキサム酸を塗布しても効果がない

トラネキサム酸の使用による鼻腔内パッキングの必要性の減少(NoPAC)。無作為化比較試験

Reuben A, Appelboam A, Stevens KN, Vickery J, Ewings P, Ingram W, Jeffery AN, Body R, Hilton M, Coppell J, Wainman B, Barton A. The Use of Tranexamic Acid to Reduce the Need for Nasal Packing in Epistaxis (NoPAC): Randomized Controlled Trial. Ann Emerg Med. 2021 Feb 18:S0196-0644(20)31461-X. doi: 10.1016/j.annemergmed.2020.12.013. Epub ahead of print. PMID: 33612282.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

研究目的

 鼻出血は救急外来(ED)でよく見られる症状であり、簡単な応急処置ができない場合、前鼻部のパッキングが必要となることがある。

 トラネキサム酸は、血栓の安定性に寄与する薬剤である。本研究の目的は、持続的な鼻出血で救急外来を受診した成人患者に対するトラネキサム酸の局所経鼻投与の有効性と、前鼻部のパッキングの必要性を低減できるかどうかを検討することである。

方法

 2017年5月5日から2019年3月31日まで、イギリスの26のEDで、二重盲検、プラセボ対照、多施設、1:1、無作為化対照試験を実施した。

 簡単な応急処置や局所血管収縮剤の塗布後も持続する自然発生的な鼻出血の参加者を、トラネキサム酸の局所投与またはプラセボの投与に無作為に割り付けた。

 主要評価項目は,指標となる救急外来受診時に何らかの前鼻部パッキングが必要であったかどうかであった。

 副次的評価項目は,入院,輸血の必要性,鼻出血の再発,1週間以内に再入院が必要となった血栓症の発生などとした。

結果

 本研究の対象者は,簡単な応急処置や局所血管収縮剤の塗布後も持続する自然発症の鼻出血の患者496名であった。

 合計で211名(42.5%)の参加者が指標となるED出席期間中に前鼻部のパッキングを受けたが、そのうちトラネキサム酸群では254名中111名(43.7%)、プラセボ群では242名中100名(41.3%)であった。この差は統計学的に有意ではなかった(オッズ比1.107、95%信頼区間0.769~1.5994、P=.59)。

 さらに、いずれの副次的な結果指標においても、トラネキサム酸とプラセボの間に統計的に有意な差は認められなかった。

結論

 簡単な応急処置ではコントロールできない外傷性鼻出血で救急外来を受診した患者に対して、出血している鼻孔にトラネキサム酸をデンタルロールで局所的に塗布しても、プラセボと比較して出血をコントロールし、前鼻部のパッキングの必要性を減らす効果はない。

 

所感

 鼻出血に対してはキシロカイン+ボスミンガーゼのパッキングが基本的な処置ですが、トラネキサム酸を塗布しても効果がないようです。