家庭医療と痛みの診察室

家庭医療と痛みの治療を中心に、調べたことや感じたことをアップしていきます。

ボツリヌスは肩の痛みにも効く

慢性肩痛に対するボツリヌス毒素注射の効果比較:無作為化比較試験のメタアナリシス

Hsu PC, Wu WT, Han DS, Chang KV. Comparative Effectiveness of Botulinum Toxin Injection for Chronic Shoulder Pain: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Toxins (Basel). 2020 Apr 12;12(4):251. doi: 10.3390/toxins12040251. PMID: 32290577; PMCID: PMC7232231.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

背景

 ボツリヌス毒素(BoNT)注射は、筋骨格系の痛みに対して有望な治療法とされている。しかし、慢性肩痛に対する有効性は未だ不明である。

方法

 我々は、慢性肩痛治療にBoNT注射を用いた無作為化比較試験(RCT)を2020年3月までの電子データベースを系統的に検索し、慢性肩痛に対するBoNT注射の有効性を検討した。

 主要アウトカムは、標準化平均差(SMD)で定量化された疼痛軽減の群間比較であった。対象としたのは666名の患者からなる9つのRCTで、肩関節痛を有する群(n=182)と肩筋膜痛を有する群(n=484)の2つのグループに分けた。

結果

 肩関節痛については、BoNT注射の有効性は、介入1ヵ月後の時点では参考治療と同等であり(生理食塩水対-1.242~0.032:SMD:-0.180、95%CI:-0.514~0.153:コルチコステロイド対-0.153)、1~3ヵ月間では優れていた(SMD:-0.648、95%CI:-0.1071~-0.225:コルチコステロイド対-0.648)。

 同様に、肩の筋膜性疼痛に関しても、介入後1ヶ月の時点ではBoNT注射の有効性は参考治療と差がなかった(SMD:-0.212、95%CI:-0.551〜0.127対生理食塩水; SMD:0.665、95%CI:-0.260〜1.590対ドライニードリングおよびSMD:1.093; 95%CI:0.128〜2.058対リドカイン)

 介入後1~3ヵ月間では優れているようであった(生理食塩水に対してSMD:-0.314、95%CI:-0.516~-0.111)。

結論

 我々のメタアナリシスの結果、BoNT注射は慢性肩痛患者にとって安全で効果的な代替手段となりうることが明らかになった。

キーワード ボツリヌス毒素;コルチコステロイド;関節;筋膜性疼痛

 

所感

 慢性的な肩痛に対して、ボツリヌス注射が効果あるようです。ボツリヌスは筋肉のけいれんや、脳卒中後の痙縮などに使われますが、ひどい肩こりなどにもたまに使われるようです。