家庭医療と痛みの診察室

家庭医療と痛みの治療を中心に、調べたことや感じたことをアップしていきます。

線維筋痛症に対する心理療法の効果(システマティックレビュー)

線維筋痛症患者の身体的苦痛に対する心理療法.システマティックレビュー

Gómez-de-Regil L, Estrella-Castillo DF. Psychotherapy for Physical Pain in Patients with Fibromyalgia: A Systematic Review. Pain Res Manag. 2020 Jul 4;2020:3408052. doi: 10.1155/2020/3408052. PMID: 32714478; PMCID: PMC7355371.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

目的

 線維筋痛症患者を対象とした心理療法的介入を試験した臨床試験の最近のエビデンスを簡潔かつ包括的に要約し、特に身体的疼痛への効果に関心を持つ。

方法

 PubMed, PsycInfo, Web of Science, Scopus, Cochrane Library データベースで文献検索を行った。論文の内容については、出版年、研究チームの所在地、デザイン、試験した心理療法的介入の種類、疼痛測定法、身体的疼痛に関する心理療法、グループ、アウトカムの簡単な説明を入手できる場合には、それを調査した。

結果

 最初の検索では475件の引用を得たが、関連する論文は13件に絞られた。スペインからの研究(n = 8)のほとんどは無作為化対照試験(n = 10)で、ガイド付きイメージ法(n = 5)または認知行動療法(n = 4)を用いたものであった。身体的苦痛の測定にはVisual Analogue Scale(n = 4)とFibromyalgia Impact Questionnaire(n = 4)が主に用いられた。身体的疼痛の改善が報告された研究はすべて発表されているが、有意差が認められたのは5例のみであった。

結論

 FS患者の身体的疼痛に対する心理療法の効果に関する証拠は多様であった;ほとんどの研究で疼痛の軽減が報告されているが、その効果は常に持続しているわけではなく、有意なものでもなかった。結果の多様性は、選択された心理療法的アプローチ、評価ツール、その他の内的変数(例えば、性格的特徴、(亜)臨床精神症状、治療のアドヒアランス)と外的変数(例えば、家族環境や社会的支援)が今後の研究で考慮する価値があることに起因しているかもしれない。

 

所感

 線維筋痛症は難治性とされており、薬物治療などの効果が乏しいことも多いです。多面的に治療をおこなう上で心理療法は大切だと感じております。この研究では心理療法の効果はハッキリしないという結論でしたが、効果が否定されるものではありませんので、今後もしっかり寄り添える治療をおこないたいです。